「チェルビ」第二十五話 恋愛連載小説
※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
駅からユージローオートまで歩いていく途中、コンビニに立ち寄り、六缶セットのビールと温かい缶コーヒーを四本買った。
中古車が並ぶ店の出入口は、既にアコーディオンゲートが半分以上閉じている。
敷地奥の小さな建物の灯りが確認できた。
事務所横の作業ピットの蛍光灯の下、橋本さんの黒い高級セダンが停められている。
その右側に、赤い色のステーションワゴンが並んでいた。
「イクオさん。こんばんは」
アルバイトの青い作業着姿の中島君が、事務所のドアを開けながら出迎えてくれた。
大学二回生の中島君が、ユージローオートに来てからちょうど一年ぐらい経つ。
彼とは、何度か店に遊びに来たときに、一緒に晩ご飯を食べに行ったこともある。
「この赤いヤツ?乗っていい?」
中島君が整備と洗車を担当してくれたステーションワゴン。
僕の第一印象は、悪くなかった。
スリキズや小キズはあるが、全体的に綺麗な印象だ。
ボディーの赤色は褪せていない。
運転席に座り、キーを回す。
ユイは助手席に座った。
走行距離のわりに、エンジン音と排気音は思いのほか静かだ。
CDとMDが聴けるステレオが取り付けられている。
FMラジオのスイッチを入れた時、橋本さんがやって来た。
「イクオー。どうや?気に入ったやろ?」
「こんばんは」
隣にいたユイも、橋本さんに挨拶した。
「イクオ。お前、また、新しいべっぴんさん連れて来たんか?」
「その言い方、誤解されるから、やめてください」
僕と橋本さんのやり取りで、ユイはクスクス笑っていた。
事務所に入り、橋本さんに現金を支払い、車検証や保険証が入った整備手帳を受け取った。
買ってきた缶ビールを渡して、少しぬるくなってしまった缶コーヒーを四人で分けた。
「イクオ、今回はすまんかったなあ」
橋本さんが僕に頭を下げてきた。
僕が勤めていた運送会社は、橋本さんが紹介してくれた。
この十月末で廃業することに関しては、橋本さんは何の責任もない。
「橋本さん、謝らんでください。一応、来月から新しいとこ行きますんで」
来月から、僕はある出版会社の倉庫業務の仕事をすることが決まっている。
この会社は元々僕が担当していた得意先で、事情を知った人事担当の人が僕に声を掛けてくれたのだ。
「あっ、そうや。中島君、あの箱持ってきて」
中島君が事務所奥の部屋から、フタが開いた段ボール箱を抱えて、ゆっくり歩いてきた。
とても大事なものが入っているのか、すごく慎重な足取りだ。
段ボール箱がテーブルの上に、静かに置かれた。
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