「チェルビ」第二十三話 恋愛連載小説
※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
ユイがバスルームから出てきた。
やはりサイズが大きすぎた服の端を全てまくっている。
髪が濡れたままだ。
「ごめん。ドライヤー渡すの忘れてたね」
「うん。あと、大きめのビニール袋ちょうだい」
濡れた服が入った袋を持って、ユイが部屋に戻ってきた。
本来の赤を取り戻した髪。
その下の初めて見る素顔は、血色が良くなった頬のせいで、いつも以上に幼く見える。
着替えとタオルを持って、僕もバスルームに向かった。
シャワーを終えて、着替えを済ました。
髪を乾かし、鏡に写る自分の顔を正視してみる。
鼻から大きく息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出した。
部屋に戻ると、たたまれた段ボールの横に、布団が敷かれていた。
おろしたばかりの紺色のカバーの折り目がくっきり見える。
小さく盛り上がった山は、その下で丸くなっている少女を想像させる。
自分でも信じられないほど、気持ちが落ち着いている。
外の雨は強く降っているはずなのに、その音はほとんど聞こえてこない。
蛍光灯の光を落として、新しい布団の膨らんでいないほうから潜りこんだ。
少しだけ冷たくて硬い布の感触が心地いい。
掛け布団を少しだけ下にずらす。
白く、柔らかな笑顔が、僕を出迎えてくれた。
わずかな光だけが照らしだす全てが綺麗だ。
赤い髪に左手の指を通す。
滑るような感触が、なんだか懐かしい。
布が擦れる音だけが、薄暗い部屋に広がっては消えていく。
耳から離した指先を、少しだけ開かれた唇にかけてゆっくり移動させる。
閉じられた目は、静かな時間の中で眠っているようだ。
キスを受けた僕の指が、白い両手に優しく捕まえられた。
僕の深呼吸に合わせて、長いまつ毛の下から黒い瞳が姿を現した。
目の前の笑顔は、僕の勇気を後押ししてくれる。
なぜか、気持ちは穏やかなままだ。
両手を使い、二人の距離を更に縮める。
右腕にかかってくる体重が、離れかけていた現実を引き戻す。
二人の間には、ユイの両腕が折りたたまれている。
お互いの額が触れ合う。
最短距離になった二人の目線。
ユイの小さな息づかいが聞こえる。
「ユイ・・・」
「ん・・・」
雨が降り続く夜。
僕は、心の中で何度もユイの名前を呼び続けた。
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