「チェルビ」第十八話 恋愛連載小説 | 「おっちゃん王国」NTG(大人になりきれないおっちゃん)のブログ

「チェルビ」第十八話 恋愛連載小説

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※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。

 意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。

※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪





店内の雰囲気は、そんなにかしこまったものではない。


カジュアルな服装の若者たちや、仕事帰りのサラリーマンやOLで賑わっていた。


僕たちは、この店オリジナルのスパークリングワインをグラスで頼んだ。


メニューにはコース料理もあったが、単品の料理を選んでいくことにした。


ユイが食べたいもので揃えるつもりだったが、半分は僕が選ぶことになった。


料理を注文してしばらくすると、スパークリングワインが運ばれてきた。


よく冷えたグラスを手に持って、無言で見つめ合う。


二人とも、数秒で真剣な表情の限界を迎えてしまった。


笑いながらグラスをユイに向けた。


「誕生日、おめでとう」


「うん。ありがと」


ユイのグラスが僕のグラスに軽く当たり、心地いい音が聞こえた。


同時に、テーブルの上のピンク色のキャンドルに火が灯った。


「うわっ。勝手に火がついた」


ユイが驚きの声をあげる。


安物の手品道具が役にたった。


僕はクスクス笑いながら、グラスに口を付けた。


少し甘口で口当たりがよかった。


のどを通っていくときの感覚が、とても気持ちよく気分が楽になっていく。


グラスをテーブルに置いて、ポケットから指輪の箱を取り出した。


「おめでと」


「うわー。ありがと」


ユイは両手で大事そうに受け取り、自分の顔の前に持っていく。


しばらく眺めて、箱の横から僕を覗きこんできた。


「開けていい?」


「うん。今すぐ、開けて」


「わかりました。今すぐ開けます」


ユイは、兵隊がするような敬礼のポーズをとり、僕にウインクしてきた。


白い指を器用に使い、銀色のリボンをほどいていく。


その指を見ているだけで、胸の鼓動が早くなっていくのがわかる。


僕は、ユイの白い指が器用に動いているのを見るのが、とても好きだった。


落ち着かない気持ちを無理やり落ち着かせようと、グラスを大きく傾けて、残りのスパークリングワインを飲み干した。


さっき感じた甘味は、どこかに行ってしまった。


グラスをテーブルに置いて、ユイを見た。


ユイは、握り締めた左手を口に当てて、真剣な表情で箱の中身を見ている。


「見て。すっごく綺麗」


フタが開いた箱を僕に見せてくる。


「知ってる。絶対、似合うと思う」


僕は、箱から指輪を取り出した。


「手、貸して」


差し出された白い左手が、僕の左の手のひらに優しく舞い降りる。


「どの指にしますか?」


「今日は、特別に、薬指でお願いします」


「かしこまりました」


指輪は、店内の照明とキャンドルの炎を反射している。


銀色の中の青色や赤色の粒が、更に深みのある色になっている。


銀色のリングは、飾りをつけていない爪を通り過ぎ、間接の部分で少しだけ抵抗があった。


「だいじょうぶ。そのまま押して」


ユイは、自分の指に入っていく指輪を見つめながら、右手を僕の右手に重ねてきた。


入った。


「どう?痛くない?」


「うん。だいじょうぶ。キツイのは少しだけ。多分、人差し指がちょうどと思う」


目の前で手のひらを何度も返して、指輪を見ている。


「ありがと。めっちゃ嬉しい。すっごく綺麗」


何度も「綺麗」を言いながら、笑っている。


今日まで何度もこの時を想像していたが、全部忘れてしまった。


この指輪は、ユイのものだ。


彼女の白くしなやかな指を飾ることで、初めてその価値がある。


何度も何度も指輪を見ながら喜ぶユイを見て、そう確信した。


一つ目の料理が運ばれてきた。




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