「チェルビ」第十七話 恋愛連載小説
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※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
仕事を終えて、寮まで走って帰った。
部屋に着いて、急いでシャワーを済ませた。
黒いノータックパンツを履き、濃いグレーの長袖シャツを着た。
ユイにもらったシャツを重ねて着てみる。
初めて袖を通す。
肩のところに出来たシワを直しながら、あまりにちょうどいいサイズに驚いた。
ハーフ丈の黒いパーカージャケットを羽織り、指輪が入った白い箱を手に取った。
ポケットのジッパーを開けて、奥に押し込んだ。
大きめのデジタル腕時計を左手首に巻きながら、鼻から大きく息を吸い込むと、鼓動が早く強くなりだした。
(なんか、プロポーズするみたい・・・)
携帯電話でユイに連絡して、駅に向かった。
待ち合わせの駅に向かう電車の中で、ユイに指輪を渡すタイミングを考えていた。
考えているうちに、僕の頭はあいかわらず余計なものを引っ張り出してくる。
指輪を渡した瞬間のユイの反応や、そのあとのことまで想像してしまう。
手を口に当て、他の乗客にニヤついているのを悟られないようにした。
駅に着き、改札機の手前で順番待ちしていると、両手を頭の上で大きく振るユイの姿が見えた。
「ごめん。待った?」
「ううん。今、来たとこ」
ユイは、この前の店で買ったラグランシャツの上に、薄手の黒いデザインジャケットを着ている。
膝上までの黒いフレアースカートは、ジャケットとセットになっているようだ。
その下に白い膝が少し見える。
綺麗で形のいい足は、ブーツを履いていてもわかる。
初めてユイの部屋に行ったときに見かけたブーツ。
ゴツめの黒い皮ブーツは、今日の服装に似合いすぎている。
そして、小豆色のメッセンジャーバッグ。
俗な表現だが、今日のユイは小悪魔的な雰囲気だ。
僕が持つユイのイメージの一つとぴったり重なっていて、意味もなく嬉しい気持ちになってくる。
「シャツ、着てくれたんや」
「ありがと。サイズがピッタリで、ビックリした」
「よかった。フリーサイズとか、ラージやったら大きいかなって思って・・・。似合ってる、似合ってる」
ブーツを前方に蹴り出すように歩きながら、僕の胸の部分を見て喜んでいる。
ジャケットのポケットに手を突っ込んで、指輪の箱を確認した。
ほとんど夜といっていいほどの空の下、僕たちは手をつないだ。
予約した時間より少し早く着きそうだったが、とりあえず店に向かった。
「仕事、早く終わって大丈夫やった?」
「うん。この頃、仕事がめっちゃ減ってる。もう会社がつぶれるし、お客さんも他の運送屋に乗り換え始めてるし・・・。いよいよ、っていう感じ」
「そっか。こうやって会えるのは嬉しいけど、複雑な感じ」
予約をしていた創作料理屋には、やはり早く着いてしまった。
店のスタッフの女性が、十分ほどで用意ができると教えてくれた。
店の入り口の待合スペースにある赤いソファに、二人並んで腰掛けた。
ユイが、僕の膝を軽く叩いてきた。
「そう言えば、この前の事件やねんけど・・・」
「事件?」
「ほら、初めて会ったとき、ウチのマンションで管理人さんが襲われたやろ」
「ああ、そうや。アレ、どうなったん?」
「結局、ウチのマンションの二階に住んでる男の人が犯人やったみたい。忘れ物を取りに行くのに、自転車を玄関の前に五分ぐらい置いてただけやのに、管理人さんに注意されたらしいねん。それで腹がたって襲ったみたい・・・」
「えーっ。それだけで、バットで殴ろうとするか?」
「他にも、いろいろ注意されてて、いっつも言い争ってたみたい。わたしも、多分、言い争ってるの、見たことある」
ユイは、事件の詳しい内容までは知らなかった。
管理人と犯人の男は話し合って、結局その男がマンションを出て行ったようだ。
事件は一応解決したので、ユイはとりあえず安心したらしい。
「お待たせしました」
先ほどの女性スタッフが、柔らかい笑顔で準備ができたことを知らせてくれた。
店の奥のほうの席を用意してくれているらしい。
女性スタッフのあとについていく。
濃い赤色のじゅうたんは、踏み心地が良かった。
ユイは、僕の左斜め後ろを歩く。
案内された席は個室ではなかったが、フロアーより二段高いところにあり、他に三つの四人掛け席があった。
案内されるまま、僕たちは席についた。
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