黒鯛よりも旨い「ヘダイ」 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは




日本人は鯛好きで、300種近い魚にタイと言う名前をつけている。小さなスズメダイからネンブツダイまで鯛とは似ても似つかないものまでタイだ(笑)。実際のタイ科の魚で市場に揚がるものは10種もない。マダイ、チダイ、キダイ、レンコダイ、クロダイなどだ。それぞれ生息域も習性も肉質も味も異なる。マダイを始めとする赤い魚は沖に住むが、クロダイの仲間は沿岸域から河口まで生息する身近な魚だ。マダイに形が似た「クロダイ」、尻尾が黄色い「キチヌ」、口吻が丸い「ヘダイ」があるが、俗称マナジとはヘダイのことで、キチヌは「キビレ」、クロダイは「チヌ」と呼ばれている。三匹並べて「どれを食う?」と聞かれたら野人は迷わず「マナジ」を選ぶ、二番目は?と聞かれたら「キビレ」だ。エビなどの甲殻類が主食の沖のマダイと違って、クロダイの仲間は悪食で、スイカでもサナギでも何でも食うから肉質にやや独特の臭みがあるのだ。「洗い」で食べれば気にはならないが、マナジの食性はマタイに近く、非常に旨い身をしている。小さなものならマダイよりも旨い時がある。ところが、市場はすべてそうだが、「知名度」で価格が決まる。季節外れの色あせたスカスカのマダイでも価格がそれほど下がらない。ブランドの地域名がつけばなおさらのことだ。買う人の自己満足の世界でバカバカしいこと極まりない。クロダイの仲間もマダイに比べれば価格は数段に落ちる。色が赤くなくて黒いからだろう。そのクロダイも、市場価値はクロダイ、キチヌ、ヘダイの順で、味とは逆で知名度の順なのだ。あまり知られていないヘダイなどは雑魚で「屁のつっぱりにもならない」と言うことなのだろう(笑)。しかし野人にとってはこのほうが都合が良い。あまり魚を買うことはないが、魚屋を見たらこのマナジがあった。30cmを超えているのだが、何故か298円なのだ。つられてつい・・・買ってしまった。こんな安い買い物はない。マナジを手に入れるのは結構大変なのだ。黒鯛と違い簡単に釣れる魚ではない。刺身も旨いが豪快に塩焼きにしよう。脂が乗って絶対に旨い。在庫が多かったから誰も買わないのだろう(笑)。

市場図鑑のサイトに知名度によって1つ星から5つ星のマークがつけてあった。5つは、これを知っていなければ恥(笑)、4つは常識、3つは通で、2つは「達人」、一つ星は学者だった。マナジには2つ星がついて、評価はクロダイより旨いと・・。わかっている人はわかっているのだ。魚屋では超が付く安価な雑魚の部類に入る。マナジの価格が上がらないことを祈っている。このネタを扱う寿司屋があるなら野人は真っ先に注文する。

たぶん、野人はこの10種のタイを刺身で一切れづつ食べれば、名前をすべて当てることが出来るだろう。旨い時期のマダイが一番だが、マダイが季節外れなら間違いなくこのマナジが一番だ。価格はドン尻だが・・それくらい美味しい。

結局、デカイので半分刺身にしたが、思った以上の脂の乗りで包丁が滑った。言うまでもなく刺身も塩焼きも絶品だった。マダイも及ばない。ご飯とマナジのアラの味噌汁入れても、この定食は吉野家の牛丼よりはるかに安い~!