いじめに遭ったわけではないし、親子関係が悪いわけでもないのに、どうしても教室に入れなくなったり、学校へ登校できなくなるという子どもたちと、教員時代に何人も出会いました。
そんな子どもの話を聞くと、「先生が他の子を怒る声が怖い」「騒がしい教室が苦手」「初めてのこと、予想外のこと、新しい環境がとても不安になる」と言います。
拒食症を病む子や、友達との関係がうまく築けないといった子の中にも、そういう繊細で敏感な子がいました。
なぜ他の多くの子にとっては何でもないようなことが、この子たちにとっては大きく響いてしまうのだろう?
その不安や心配を取り除いてあげるには一体どうしたらいいんだろう?
ずっとそんなことを考え続けていく中で、我が子の子育ての最中に、その答えが見つかりました。
娘が生まれ、その育てにくさに悩んでいる時に、私は偶然「HSC」という概念を知りました。
HSCとは、心理学者エレイン・N・アーロン氏が提唱した概念で、 Highly Sensitive Childの略で、「人一倍敏感な人」という意味です。
このタイプの子は以下のような特徴があります。
・敏感で考え深い。
・物事の本質を鋭く感じ取る。
・静かな環境が好き。
・勉強ができる子も多いが、学校等たくさんの人がいる騒がしい場所は苦手。
・戦闘的な環境や競争が激しい環境には適さない。
(ダウンしてしまう)
(ダウンしてしまう)
・疲れたら一人静かにエネルギーを充電したくなる。
・行動するより観察することの方が多い。
・イベントや人に会うことが重なると、ひとりになってリラックスしたくなる。
・何かを決断する前には十分な時間が欲しい。
・せかされるのが嫌い。
(HSCのチェックリストはこちら⇒★)
HSCの子は、少ない刺激でも、神経が素早く反応してしまうので、普通の子が全く気にしないようなささいなことにも、動揺してしまいます。
脳がかすかな情報まで拾い集めるために、自分のまわりのあらゆるものを全部拾って細かいことまで気になってしまい、集団生活の中では、情報過多で疲れてしまい、本人はとても大変でつらい思いをします。
HSCの子の中には、自分の本来の姿を否定し、まわりの子と同じようになろうと努力して、自分を見失ってしまう子どもたちもいます。
それは言ってみれば、リンゴとして生まれているのに、オレンジになろうと必死に努力しているようなものでした。
何で自分はこんなに敏感なんだろう…
自分はダメな子なんだろうか…
なぜ他の人のように頑張れないんだろう…
そんなふうに、HSCの子は、自分らしさを否定し、自分を責めて落ち込みやすいんです。
繊細な子どもたちは、優しくてピュアだからこそ、こんな誤解もしやすいんです。
また、HSCと非HSCの間には、「感受性の差」というとても大きな溝があります。
一般の学校では、同じ年齢のたくさんの子どもたちが、同じ教室で、同じ授業を受けて、毎日集団生活を行っています。
敏感でない子も、とても敏感な子も、さまざまな個性や特性を持った子や先生が同じ教室に一緒にいるわけです。
たとえば、突然大きな声で呼ばれたり、わざとではなくても友達とぶつかったりあたったりしてしまうことは学校生活の中ではよくありますよね。
非HSCにとっては、そんなことはそれほどたいしたことではなく、さっさと受け流すことができることです。
でも、敏感なHSCは、そんな刺激にとてもびっくりしたり、不快感を感じたり、不安を感じてしまうのです。
こんなふうに、HSCと、そうでない子の間には、大きな感受性の溝があるので、HSCがなんでそんなに嫌がるのかまったくわからない非HSCもいます。
たまに、学校の先生の中には、そんな敏感で繊細な子に対して、「もっと強くなりなさい!」「お母さんがなんとか子供さんを強くしてあげて下さい」「もっと経験を積めば大丈夫!」という人がいます。
でも、それは、「痛み」を「かゆみ」と感じろ、自分の感覚をだませと言うことになり、到底無理な話なのです。
もしそんなことを続けていたり、我慢し続けていると、HSCには無理が溜まってしまい、最後には身体に症状が現れてきてしまうかもしれません。
毎日毎日不安や生きづらさを感じ、それを我慢し続けていたら、心が傷だらけになり、ボロボロになっていってしまいます。
でも心の中は人には見えませんから、そういった心の状態が不登校や拒食症というような症状として現れてくるのです。
HSCにとって、いろいろなタイプの子どもや先生がいる学校は、ただそこに座っているだけでも神経がすり減って、ものすごく疲れるストレスのたまる場所なのです。
「学校は戦場のようだった。毎日が戦争だった。」と言った子もいました。
HSCの子は、とても優しく思いやりがあり、平和主義の子が多いので、誰かと競争したり闘ったりしなければならない場合には、それが大きなストレスになってしまいます。
ですから、タフさとスピードが求められ、競争がベースになっている学校や社会においては、生きづらい性格であるかもしれません。
そんなふうにとても生きづらく、何だか損しているように思えてしまうHSCですが、実は、HSCにもいろいろな人がいて、子供のころはとてもシャイでも、子供時代や多感な青春期をうまく通り抜け大人になってからは社会的に大活躍している人がたくさんいるんですよ。
HSP研究の第一人者、アーロン博士によると、偉大な人の中に多くのHSPがいると言うことです。
アーロン博士による「真の」HSP著名人
ジョージ・ワシントン アメリカ合衆国大統領
ロバート・F・ケネディ アメリカ合衆国大統領
イングマール・ベルイマン 映画監督
ライナー・マリア・リルケ 詩人
カール・ユング 心理学者
テレサ・デ・アビラ 神秘主義者
エレノア・ルーズベルト アメリカ合衆国大統領夫人
エミリー・ディキンソン 詩人
カミーユ・クローデル 彫刻家
ジェーン・オースティン 作家
ブロンテ姉妹 作家
マリア・ギンブタス 考古学者
フランツ・カフカ 作家
(「HSP高度に感受性の強い人HighlySensitivePerson P子のブログ」より引用)
(「HSP高度に感受性の強い人HighlySensitivePerson P子のブログ」より引用)
このリストを見ると、素晴らしい才能や勇気や魅力を持ち合わせ、成功した人がたくさんいることが分かります。
積極的で外交的な子の方が、敏感で繊細な子より優れていると思い込んでいる人が多いですが、どちらかが優れているわけでも劣っているわけでもありません。
敏感さ・繊細さという特性に正面から向き合い、自分に合う道、無理しないで生きられる方法を見つけることが、HSCが明るく元気に健康に生きていく上で、とても重要になってきます。
どうぞ胸を張ってお子さんの敏感さを大切にしてあげて下さい。
そしてHSCのお子さんの本当の気持ちを大切にして、その子に最も合う、その子らしい生き方を尊重してあげて下さいね。