束縛をしないで楽しみましょう だと?勝手に遊んでくれと言いたい。
美咲から好きな人が出来たと告げられた時、即座に「分かった」とだけ言い部屋を出た事を思い出す。
特に美咲と別れて残念だとか悲しいだとかと言う感情が無かった。
彼女に対して愛情が無かったからなのかもしれない。
美咲は誘っても誘ってものって来ない雪哉にしだいに苛立ちを見せ始めた。
「誰と付き合っているの?」
「言っても美咲は知らない」
そっけなく言った所でスタイリングが仕上がった。
「お疲れ様でした」
口を尖らせている美咲に仕事用の笑みを向ける。
立ち上がった美咲は全身が映る鏡の前に立った。
顔を柔らかいふんわりとしたカールで縁取る髪型。
きつい女のイメージからふんわりと優しいイメージになった。
口を尖らせるのもそこまでで鏡の中の出来栄えにうっとりとした顔になった美咲だ。
「いつもながら素敵ね ありがとう 雪哉 また来るわ」
「ありがとうございました」
他人行儀に頭を下げる雪哉に美咲は肩をすくめた。
* * * * * *
美咲を送り出すと果物を買い自宅へ急いだ。
静かに杏梨の部屋をノックすると中から返事が聞こえた。
ドアを開けると驚いた顔の杏梨が目の前に立っていた。
「どうしたの?早いね?」
「ただいま それより寝ていなかったのか?」
「え?う、うん もうすぐ期末テストだから」
「でも寝ていないとダメだろう?」
咎めるようなそして甘い声。
「もう大丈夫なんだよ?熱もないし」
雪哉は杏梨の言葉を確かめる為に額に掌を当てた。
「そうだな なさそうだ」
ゆきちゃんの手・・・気持ちが良い・・・。
杏梨は思わず手を伸ばして雪哉に抱き付く。
抱きつくと耳に雪哉の心臓の音が聞こえてきた。
規則正しい心臓の音・・・。
私が抱きついてもドキドキしないのかなぁ・・・。
わたしは痛いくらいにドキドキしているのに。
「杏梨、すごい進歩だね?」
杏梨から抱きつかれ驚いた。
すごい進歩・・・そうなのかなぁ・・・でもね?ゆきちゃんだから大丈夫なんだよ?
杏梨は顔を上げてにっこり笑った。
続く