江藤さぁん…
お…お願いしますよぅ…
まっだですかぁ…?
私の泣きそうな声が
男子トイレにひびく。
そんな焦らされたら…
出るものも出ないからな~
そりゃそうですよね…
ごもっとも…
でも、、もうすぐ…
振り返れば、、、
ひえぇぇぇえっ!
玉田教授が!!
数十人のおともを連れている。
今、隣の部屋に入って行った。
私の担当部屋まで、あとすぐ。
もし、一番目に診察する
江藤さんのベッドが
もぬけの殻だったら…?
考えるだけで
足がガクガク震える。
江藤さ―ん!江藤さーん!
このままじゃぁ、
私の『看護師』として生命が
終わっちゃいますから~
お願いっしまーす!
お願いっしまーす!
その時、ジャーッ!と
水を流す音が。
江藤さんは
ハイハイと半分ズボンを下げたまま
私に追いやられるよう病室に戻った。
脱いで!
えぇ?
そのままベッドに私の手で
押し倒された江藤さん。
あれよあれよと
上半身を露わにされたのだ。
教授回診です!
ダッダッダッダ!
足並みよく
行進する兵隊みたい。
思わず、息を呑む。
この瞬間は患者さんたちも
つられて息をひそめる空気。
江藤さんの上半身に
玉田教授が聴診器をあてた。
医学生たちがそれを取り囲む。
ひどく呼吸が…
乱れていますね。
苦しさがありますか?
江藤さんが私をみる。
まさか、私がトイレから
走らせたとは言えない、、、
ごめんなさ~い。
私が目の前で手を合わせた。
ハハハ…何てことない。
お偉いさんに診てもらうのは
やっぱり緊張してしまいますな~
江藤さんの優しい
機転の利いた返答。
ほっと胸を撫で下ろした。
そう、、、ここは白い巨塔。
私は石田美月。
大学病院に勤めて、
まだ2年目の看護師だった。

