産婦人科になりたての頃
病院では毎日沢山の仕事があった・・

朝八時から時間に追われる様に


点滴
抗がん剤のチェック
分娩進行状況の確認と方針相談
担当患者さんの状況チェック
退院診察
薬の処方
術後経過のチェック
羊水検査
etcetc・・・

沢山の業務を
毎日淡々と淡々と行っていた


そんな朝の業務の中に


どうしても好きになれない仕事があった・・


それは・・



人工妊娠中絶手術



この手術が
大体週に1~2回は
常にあったと思う


人工妊娠中絶手術は
流産手術とほとんど同じ様な手術です


静脈麻酔で患者さんをボーッとさせて

膣に機械をかけて(クスコと呼びます)


↑クスコ(膣鏡)
産婦人科医のマストアイテム
ガッと開かれると、かなり痛い・・
なんとなく女医さんの方が
ガッと開く傾向が高い様な・・


子宮の出口をへガールという道具で
段々大きく開いていきます


↑へガール:段々太いのを使って
 子宮の出口を広げる・・
麻酔無しだと確実に痛い・・

ここまでが前準備で
いよいよ本番


胎盤鉗子という道具を使って
赤ちゃんの袋を掴んで引っぱりだします

↑胎盤鉗子:本来産後残った胎盤等を
引っぱりだす為に使う


さらに子宮内に遺残物があると
感染の原因になったりするので
キュレットというスプーンみたいな道具で
子宮内をガリガリ掻いてきれいにする



↑キュレットの先っぽ



この作業は、盲目的に子宮の中に道具を突っ込むので
結構危ないのです

そのため、大学病院等人手が沢山ある場所だと
お腹から超音波を見ながら
子宮を傷つけない様に手術を行います




お腹からの超音波では
子宮とその中にある胎嚢(袋)
そして、赤ちゃんが見えます

妊娠した経験がある読者さんなら
イメージし易いかと思いますが


この赤ちゃんは


むちゃくちゃ動くのです


もちろん生きているからね


動いている赤ちゃんを
袋ごと引っ張りだす


特に問題が無い命を奪っている事実を
まざまざと実感させられるこの処置は
何度やっても好きになれません


多分私だけでなく
同じ様な医者は
山ほどいると思いますが・・





さて・・

現在日本の一年あたりの出生数は
約100万人です


一方、一年間の人工妊娠中絶件数は


約20万人です


20万人と言われても
なかなかピンときませんが、

調べてみた所
小田原市や岸和田市、山口市なんかの人口が
約20万人だそうです


毎年小田原市の人口くらいの
10週前後で元気な赤ちゃんが
人工妊娠中絶(長いので以後中絶に統一します)で、
生を受ける事が出来ない現実


すごいと思いませんか?


まあ、その情報を受けて
何を感じて、どう考えるかは
人それぞれですが、
この数字は動かす事の出来ない事実です


これだけ中絶件数があるのですから
当然外来診療で、中絶希望妊婦さんに
沢山遭遇する訳です


大体週に数人は
中絶相談に来るというイメージです

中絶をしたいという方達は
大体こんなセリフを口にします


今回はおろしたいと思います」

もう聞き飽きてしまったこのフレーズに対して

赤ちゃんにとっては、
今回も何も無いよなあ


といつも思ってしまう


だって、その赤ちゃんにとって
次なんて永遠に来ないですからね・・

さらに外来診療では、
不妊症に悩む人を沢山見てきたし
繰り返す流産を経験する人も沢山知っているので



尚更その感情は強くなります



ただ私達には
中絶希望を止める権利も無いし
中絶希望者の事情も知らないし
その後に責任を持つ事もできません

だから


中絶希望者には
淡々と説明するんですよね・・


「健康な赤ちゃんの命を理由も無く奪う事はできません

母体保護法という法律の名の下に

母親側に生命健康を保持できない

何らかの問題がある場合のみ中絶手術を行う事ができます」


赤ちゃんの命を勝手に奪う事は許されていません
ただ、その妊娠が母体健康にとって
大きなリスクを伴う、と判断した時に
その行為が合法化されるのです


そのため私達産婦人科医は
母親にどんな理由があって
中絶を行うのかを必ず提示しないとなりません


多くは
経済的理由

重症悪阻(つわりが酷すぎる)

という理由が提示されます
正に「建前上」理由をつけるんですね


先ほどの説明する時には

「あなたは、あなたの一方的な理由から
お金を払って、私達に子供の命を奪う行為をさせるのですよ」



と心の中で相手に語りかけているのですが



その真意は
伝わっている実感は
ほぼ無いですね・・


複数回の中絶を行っている人に
「今回の妊娠は、どうされますか?」

と聞いたら

「おろしますっ!」

と即答される事もあるし

母体保護法の説明しても
ずーーっと


「?」

顔の人もいるし


多分問題点は
性教育、不況、法律、
様々なところにあるだろうし
一つ一つの問題もかなり根深いと思いますが


事実として


中都市の人口に匹敵する人数の赤ちゃんが
毎年生きる事を奪われている



加えて


毎年20万人の命を奪わさせられる
処置を行わされている産科医がいる

事を
少しでも多くの人間が
実感して頂ければな・・


と思います


次回は
もっと大きな【毒】
を吐きます


たまにはいいですかね??


では