8年ぶりに再診した人の治療(前半) | kyupinの日記 気が向けば更新

8年ぶりに再診した人の治療(前半)

ある男性患者さんが8年ぶりに再診した。彼は8年前に初診し、数回再診した後、軽快し病院に来なくなった。心因反応のようなもので、すっかり症状が消えてしまったんだと思う。

過去ログでは、このような人は初診として扱えないと記載している。これは厚生局の指導なので仕方がない。つまり、このような人は初診料が取れない。もちろん再診料は取れるが。(何十年経とうが新患にならないという話。ただし、このタイプの指導はローカルな面がある)

しかしよく考えると、カルテは5年経つと廃棄して良いことになっているため廃棄していたら新患で良いことになる。精神科病院は特にカルテは長期保存することが多いので、ほとんどの場合、過去のカルテがある。

その理由だが、ある患者が初診した時の記載内容は、遠い将来、障害年金の診断書を書く際に必要になることがあるからである。うちの病院は長期に入院している人はともかく、外来のみの患者は20年以上前のカルテは処分していることが判明。

古いカルテを処分する病院がどのくらいあるのか不明だが、結果的には良くなかった。ごく稀に困ることがあるのである。ある患者さんは、前院長の紹介状が転院先の精神科病院に残存していて、しかも病歴もしっかり書かれていたため、ほぼ大丈夫だった。

僕がこの病院に来てからは、死亡患者のカルテも残すようにしている。その理由だが、死亡してかなり年数(それこそ10年以上)が経っても、生命保険の死亡診断書が必要になることがあるからである。

生命保険の給付の請求の時効は保険法によると3年のようであるが、死亡診断書など明白なものは保険会社は時効を適用せず請求に応じる会社が多いようである。このような時、カルテがあるとないとでは大違いである。

ある患者さんの家族は、死亡給付金に加え、1日当たりの入院給付金も給付されている。

なぜ家族からこのような請求があるかといえば、本人が加入していたことに誰も気付かず、何年もたって、突然、保険証書が家の中で見つかることがあるから。時にこのようなことがあるので、保険会社も時効を適用しないことが多いんだと思う。

精神科ないし心療内科クリニックで最も困るのは、このタイプのクリニックはそのドクターの健康状態などの急変により突然、廃院されることがあること。その場合、初診日を始め、どのように治療されていたのかさっぱりわからなくなる。

このようなことを考慮し、古いカルテは5年を超えても責任を持って保存してくれる会社があると便利だが、精神科の性質上、個人情報の問題もあるためそれが困難になっている。

市民病院などの公的病院では、カルテは廃棄していても受診記録のノートだけは残していることも多い。僕の患者さんでは、このノートが残っていたために未成年時に「摂食障害」の診断で発達小児科に受診していたことが証明され、納付要件の問題をクリアし障害年金を受給できるようになった人がいる。また別の患者さんでも、未成年受診の証明をこのノートによったことがある。受診記録のノートだけでも大変な違いなのである。

クリニックだと、廃院された場合、このノートすらない。クリニックにかかる人はこのような不利な状況になりうることも考えておくべきである。ただし、将来に渡り障害年金を受給されそうにない軽い精神疾患の人は問題ないと思う。

(本題に入っていないが前半終わり)

参考
精神科と心療内科は
精神疾患と生命保険について(その1)
精神疾患と生命保険について(その2)