全く帰る家がない人
長期入院している患者さんの中に、全く帰る家がない人がいる。それどころか親戚も皆無である。
そのような人は住所も病院になっており、障害年金の診断書など提出書類の住所も同じである。これは決して珍しいことではなく、最終的に病院か搬送病院先で亡くなった場合、お葬式やその後のことも精神病院がいろいろ考えなくてはならない。
ある女性患者さんは、原爆で自分以外の家族全員が亡くなったらしい。しかし、彼女は奇跡的に助かり、しかも熱傷すらなかった。
その後、時間が経って統合失調症を発病したのである。
被爆と統合失調症はおそらく無関係である。広島や長崎で統合失調症が多いなんて聴いたことがない。元々、脳など神経組織は放射線に強いこともあるのかもしれない。
彼女は病型は非定型であり荒廃がなかった。ただし、もう高齢なのである。彼女は10年くらい前までたまに正月などに温泉に1泊旅行にでかけていた。
帰る家がないとはいえ、定期的に病院から温泉旅行に行く人は過去に彼女しか知らない。現在、彼女は旅行ができるほどの体力はない。
彼女は過去に脳神経外科や整形外科で手術を受けたことがある。ある時、認知症のような物忘れや不注意と思われる症状が出た。看護者らはその時、「この人も高齢だから」と言う話であったが、よく話を聞いてみると、急に出現したらしく発症の経緯に不審な点があった。
何も原因がなく、急に認知症になるなんてありませんよ。
と看護者に話した。まだその病院に来たばかりであり、それ以前の様子が100%わかっていたわけではないが、脳神経外科に受診させたのである。
診断は「慢性硬膜下血腫」で、手術をした方が良いと言う話であった。慢性硬膜下血腫は高齢者では、脳神経外科的診断のうちでは比較的ありふれた疾患だが、統合失調症の人では多くは経験しない。
手術を受ける場合、麻酔や手術の前に本人と家族の承諾書や保証人が必要になる。このように全く身寄りがない人では、院長の自分が保証人になるしかない。身寄りが全くない患者さんはそうそうはないが、たまにこのような事情の際に患者さんの保証人になっている。
住宅ローンのように保証人を回避する方法がないのが辛い。保証人になった場合、どのようなリスクが生じるか考えてみた。
医療費については保険も効き、本人が支払えるので問題ない。困るのは、まだ体力がある人で、医療機器を壊してしまうとか、医療に携わる人に怪我をさせてしまうことであろう。何らかの身体的疾患が重篤でそれどころではない人は問題ない。他人に対し怪我をさせるというのは考え難いが、何らかの検査の際に急に暴れ出し医療機器を壊してしまうことはありうる。
これは精神科の患者さんだけでなく、精神科に入院していない認知症の高齢者、またはそう高齢ではない人たちでもありうることである。
「なるな保証人」と言う言葉があるが、この場合はならざるを得ないのである。(ならなかったら手術どころか入院も難しい)
彼女はこの1回を含め、過去に3回、手術を受けており、全て自分が保証人になった。
彼女はボケてはいないので、今でも非常に感謝しており、年賀状にはよくそのことが書かれている。
参考
古典的ヒステリーは器質性疾患なのか?
そのような人は住所も病院になっており、障害年金の診断書など提出書類の住所も同じである。これは決して珍しいことではなく、最終的に病院か搬送病院先で亡くなった場合、お葬式やその後のことも精神病院がいろいろ考えなくてはならない。
ある女性患者さんは、原爆で自分以外の家族全員が亡くなったらしい。しかし、彼女は奇跡的に助かり、しかも熱傷すらなかった。
その後、時間が経って統合失調症を発病したのである。
被爆と統合失調症はおそらく無関係である。広島や長崎で統合失調症が多いなんて聴いたことがない。元々、脳など神経組織は放射線に強いこともあるのかもしれない。
彼女は病型は非定型であり荒廃がなかった。ただし、もう高齢なのである。彼女は10年くらい前までたまに正月などに温泉に1泊旅行にでかけていた。
帰る家がないとはいえ、定期的に病院から温泉旅行に行く人は過去に彼女しか知らない。現在、彼女は旅行ができるほどの体力はない。
彼女は過去に脳神経外科や整形外科で手術を受けたことがある。ある時、認知症のような物忘れや不注意と思われる症状が出た。看護者らはその時、「この人も高齢だから」と言う話であったが、よく話を聞いてみると、急に出現したらしく発症の経緯に不審な点があった。
何も原因がなく、急に認知症になるなんてありませんよ。
と看護者に話した。まだその病院に来たばかりであり、それ以前の様子が100%わかっていたわけではないが、脳神経外科に受診させたのである。
診断は「慢性硬膜下血腫」で、手術をした方が良いと言う話であった。慢性硬膜下血腫は高齢者では、脳神経外科的診断のうちでは比較的ありふれた疾患だが、統合失調症の人では多くは経験しない。
手術を受ける場合、麻酔や手術の前に本人と家族の承諾書や保証人が必要になる。このように全く身寄りがない人では、院長の自分が保証人になるしかない。身寄りが全くない患者さんはそうそうはないが、たまにこのような事情の際に患者さんの保証人になっている。
住宅ローンのように保証人を回避する方法がないのが辛い。保証人になった場合、どのようなリスクが生じるか考えてみた。
医療費については保険も効き、本人が支払えるので問題ない。困るのは、まだ体力がある人で、医療機器を壊してしまうとか、医療に携わる人に怪我をさせてしまうことであろう。何らかの身体的疾患が重篤でそれどころではない人は問題ない。他人に対し怪我をさせるというのは考え難いが、何らかの検査の際に急に暴れ出し医療機器を壊してしまうことはありうる。
これは精神科の患者さんだけでなく、精神科に入院していない認知症の高齢者、またはそう高齢ではない人たちでもありうることである。
「なるな保証人」と言う言葉があるが、この場合はならざるを得ないのである。(ならなかったら手術どころか入院も難しい)
彼女はこの1回を含め、過去に3回、手術を受けており、全て自分が保証人になった。
彼女はボケてはいないので、今でも非常に感謝しており、年賀状にはよくそのことが書かれている。
参考
古典的ヒステリーは器質性疾患なのか?