精神科医と消費電力 | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科医と消費電力

この夏は全国的に電力が十分には供給できない見通しで、テレビや新聞で節電の話題が良く出る。実際、LED電球や節エネグッズが良く売れているらしい。

精神科医はそれほど電力を使わないよなぁ・・

と思っていたら、よく考えるとCTはこれだけで結構、電力を使う。

CTは発売当時は大変高価な医療機器で、当面、日本では使えそうにない状況だった。CT出現以前は、たとえば脳腫瘍でさえ、左右のどちらにあるのか、臨床検討会でかなり議論されたらしい。

臨床所見や気脳写などの検査で左右のどちらにあるのかを予測し、それでもなお開頭すると逆だったりするので、当時は臨床診断も簡単ではなかったことがわかる。(逆に言えば、臨床診断が鍛えられた。)

気脳写は脳内に空気を注入して、脳の形態を造影する方法であるが、この検査は被験者にかなりの苦痛を与えるため、CT普及以後、行われなくなった。

ところでCTであるが、思いもよらない初期に全国の国立大学に納入されることになったのである。日本とイギリスの貿易収支の関係から、日本政府がイギリス製のCTをまとまった数、購入したためである。

つまり初代CTは、女王陛下のCTだったことになる。(という話。細かい所は少し間違っているかも)

女王陛下のCTは残念ながら、今のCTに比べ比べ物にならないほどボロかった。(黎明期なので仕方ない)

CTが発売された当時、今のMRIはまだ研究段階であり、名前もNMRと言われていた。実際、NMRは放射線科の試験のヤマだったのである。

いざ発売されると、なんでかMRIに名前が変わっていたので違和感があった。当時、MRIが総合病院に初めて納入された時、どうしてもNMRと言ってしまうので、ボスが、

あんたは、何故NMRと言うんだ?

と質問された。ボスはNMRどころかCTすら学んでいない時代で、僕のように名前の変更の時代を経験しておらず、わかるはずはなかった。

さて、CTスキャンであるが、実は医師でも撮影できることになっている。個人の精神病院に放射線技師がなくても医師が撮影できるのである。

だから朝起きて病院いくと、まずCTのウォーミングアップである。CTは朝一番にこれをせず、急に動かしてCT撮影すると管球を痛める。管球はどうしても劣化していく部品で、これを交換するだけで1000万円近くするため、メンテナンスはおろそかにできない。

CTの操作は簡単なもので、一度覚えるとコンピュータより遥かに易しい(実際、名前を入力するなどは似ている)。僕は自分だけで、年間1000名くらいCT撮影していた。自分でCTを扱い、撮影もしていたのである。

当時、そのCTはヘリカルCTも可能であったが、2つの理由でしなかった。1つは管球を早く劣化させることと、被曝が大きいことである。また消費する電気代もバカにならない。

CTはあれば非常に便利であり、臨床的に所見が出ているレベルの下垂体腫瘍は一発でわかる。

思ったことは精神科に受診するような人でも脳腫瘍は非常に珍しいこと。あれほど撮ったのに、滅多に遭遇しなかった。

僕の友人はヒステリーの所見で初診した婦人にCTを撮影したところ全く正常であったが、実は瀰漫性の脳腫瘍だったことがある。僕もそのCTを見たが、ちょっと見た範囲では全然わからない。あれは造影すればすぐにわかったと思うが、当時の造影剤は必ずしも安全でなく、時間とお金がかかるため、特に精神科は初回CTは造影剤を使わなかったのである。今の環境、つまりMRIを撮影すると容易にわかると思う。

精神科医でもCTを毎日現場で扱うようになると、胸に緑バッチを義務付けられる。1ヶ月の被曝量をチェックするのである。この検査で、僕は感光しているのを1度も見たことがなかった。CTのみ撮影している限りでは、被曝する機会がないようなのである。

ある日、ボケッとしており、うっかり朝のウォーミングアップ中に検査室の中に入ってしまった。ウォーミングアップ中に室内に入ると、ゴトンゴトンと音がしているので、すぐにヤバイことがわかる。寝ぼけていたが、いっぺんに目が覚めすぐに飛び出して、

今日は被曝したかにゃ~


と思った。それでも検査では感光していなかったのである。その後、もう少しハードに検査している外科の先生の緑バッチを後学のため見せて貰った。

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

何をどうしたらあんなになるんだ・・あの変色というか感光だろうが、どのくらいのものだろうか?と思ったものだ。医師や放射線技師の場合、被曝量が多いと、女の子が生まれやすいと言う医療業界の都市伝説がある。

この伝説には理由もついており、被曝はY染色体の精子を減らすためという(本当か?)。

MRIはその原理上、さほど消費電力がないらしい。しかし、CTは大変な消費電力だったのである。いつだったか実際計算してみて驚いたことがある。CTは販売会社の定期点検代も含め、ランニングコストがバカにならない。

MRIが病院に導入される際、ごく小さなものでも金属片が被験者の体内にあった場合、危険であると注意された。

MRIが発売された初期、フランスかどこかで旋盤工か溶接工か忘れたが、本人が気づかないうちに仕事中に微小金属片が眼球内に入りこみ、それに気付かずMRIが実施され、金属片が動き失明する事件があったらしい。