総合病院での保守的な入院 | kyupinの日記 気が向けば更新

総合病院での保守的な入院

ずっと以前、精神科(心療内科)クリニックと精神科病院では、来院する患者さんの疾患分布やニーズが違うと書いている。

総合病院にある精神科も、単科の精神科病院とはややニーズが異なる。近年では、総合病院内の精神科病院は合併症や精神科救急を扱っていることが多く、非常に重要な役割を負っているのにどんどん廃止されている。(総合病院の精神科は徐々に減少しつつある)

これは色々な要因があるが、1つは診療報酬の問題がある。同じベッドを使うにしても精神科のままでは収益性が低いのである。総合病院全体から見ると、精神科を廃止して最先端の内科・外科病棟にした方がずっと利益が上がる。

その結果、合併症のある精神科患者さんの入院先が非常に少なくなっているのである。この高齢化の時代に。

僕が総合病院の精神科で働いていた当時の話。

総合病院に来院して、最初の受付で精神科に廻されてきたような患者さんは、今ひとつ精神科に受診しているという感覚に乏しい。ある患者さんに、

この医者は聴診、打診もしない!

などと文句を言われたことがある。

もし精神科医が、その必要がない初診の患者さんに聴診したとしたら、かなり変な精神科医と思われる可能性の方が高い。特に若い女性患者さんだと。

この話を先輩医師に伝えたところ、急に怒り出し、「○○君、そんなことを言われたら、われわれは脳や精神を診ていると言わないとイカンよ」と言った。

総合病院ではそのようなことがあり、診察後、帰ってもらった日の夜、偶然、内科・外科的に急変し亡くなったりすると、なんだかよくわからない理由でこちらが文句を言われることがある。(普通、総合病院は一般開業医の内科、外科の紹介が多い。←ここが盲点)。

そういう背景から、これは今日帰って貰うより、この週末は入院して貰った方がよいのでは・・

という保守的な考え方に陥りやすい。何かありそうな気配があると、家に帰ってもらうのと総合病院内に入院してもらっているのではリスクが断然違う。ICUなど最先端医療設備が整っているからである。

特にとりわけ難しい患者さんは、なぜか手薄の土曜日などに来る。そういう時には病院にいてもらった方がこちらも週末が安心である。

ある日、年配の男性が初診。

家族の言っていることと、本人が言っていることが食い違い、精神疾患の全貌が見えないこともあり、とりあえず入院してもらった。入院に関して、家族、本人とも拒絶がなかった。まだ医療保護入院という用語もない時代である。(当時、今の医療保護入院は同意入院と呼ばれた。)

その時は軽度の認知症ないし意識障害を疑ったのであるが、翌日ベッドサイドに行って見ると、なんと彼は老眼鏡をかけて英字新聞を読んでいたのである。(英字新聞を読むことが健康を必ずしも意味しないが、この人に限ればもう十分)

その日のうちに帰って貰ったよ。

このようにして、精神科医は少しずつスキルを上げていくのである。