定型と非定型抗精神病薬の相違について | kyupinの日記 気が向けば更新

定型と非定型抗精神病薬の相違について

一応、今回は、統合失調症に対する定型と非定型抗精神病薬についての話。双極性障害とか広汎性発達障害などと言い始めると、ワケがわからなくなるので。

過去ログにもあるが、定義的には非定型抗精神病薬はEPSの副作用を起こしにくいものとされている。しかし臨床医は、非定型抗精神病薬には陰性症状への効果を期待しているし、実際、非定型抗精神病薬にはそのような特性もみられる。

EPSの副作用が少ない話だが、人によればけっこう出現し実用にならないケースもある。だから副作用が多い少ないというのは個人差があり、相対的なものである。近年、非定型精神病薬の少量でさえ、EPSが出すぎる人が増えてきている。

こういうことを考えるに、新しい抗精神病薬は「EPSが少ない」より、むしろ「陰性症状の改善」をメインに置いた方が、臨床現場の実態をより反映したものになるように思う。(参考

過去ログでは、統合失調症の本質は陰性症状であると書いているが、これはかつてずっと思っていたことで、今では陽性症状と陰性症状を五分五分に考えている。重要度において、この2つは並立していて差はない。

そもそも脳内の状況はともかく、臨床的にはこれらを分けて考えるのは妙なものである。五分五分と思うようになったのは、ある時、陽性症状と陰性症状が本質的に反比例していると思うようになったからである。

統合失調症には、陽性症状も陰性症状もない。(←存在しないという意味ではない)

このような考え方をすると、妄想型の統合失調症の人に狭義の陰性症状がほとんどないことや、初発の際に、幻覚妄想が活発な人に陰性症状がほとんど見られない(それどころかプレコックス感すらない)ことが説明できる。

長期入院している古い患者さんは、陽性症状も陰性症状もかなりあるではないか?という意見もあると思う。これは荒廃しているからそうなるわけで、そういう人は陽性症状と陰性症状のトータルが多いからそう見えるだけだ。レベルが上がれば、どちらかがが増えても他方がそこまで減少しない。(ノートに奇妙な図形や文字列を書いてくるほど、Zerfahrenheitがあるような人々)

定型抗精神病薬の中にも本質的に陰性症状に効果が高い薬が存在するし、ブチロフェノンでも少量であれば賦活作用がみられるので、陰性症状に関しては定型抗精神病薬はダメだとまでは言えない。その証拠に、かつてセレネースは、

少量では賦活、大量では鎮静。

などと教えられた。

統合失調症の人の陰性症状改善がもたらすものであるが、より生産的でプラスに向える薬物以外の治療法に参加しやすくなるメリットがある。例えば、自閉的で全く自室から出てこないような人は、作業療法やデイケアなどに参加できない。

陰性症状への効果が良好であれば、治療のセカンド・エフォートがしやすい。

セカンド・エフォートとは、アメリカン・フットボールの言葉で、攻撃側の選手がタックルを受けても少し粘ってゲインを多く取るようなプレー上の努力を言う。これができることに大きな意味がある。

デイケアなどの参加をバカにしている人がいたとしたら、それは間違っている。患者さんはデイケアに出始めると、垢抜ける感じにはなる。

だって、女性は病院にスッピンでは来ないでしょう。


定型に比べ、非定型抗精神病薬は本質的に副作用が少ないかは微妙である。

そういう話は過去ログにも出てくる。無計画に大量に処方すると、非定型でも副作用は出やすくなるし、従来の抗精神病薬には見られなかった副作用が出現することがある。例えば著しい肥満や本質的な統合失調症の症状の悪化である。

極端なことを言えば、非定型抗精神病薬による幻覚妄想の惹起や著しい興奮である。

定型、非定型の2つは、大雑把な寛解率もそこまで差がないという意見もある。それでもなお非定型抗精神病薬には価値があるのである。それは「寛解の質」と言える。

もし少量ではなく、そこそこの量を30年服薬するとしたら、非定型の方がたぶん優れていると思うよ。少量であれば、そこまでの相違はないと思う。

参考
SDA
エビリファイによる病状悪化について
突然副作用が出てくるという謎
精神医療における場所、空間、時間の考え方
非定型抗精神病薬の病状悪化率
統合失調症の寛解、就労、予後の謎