若い人へのSSRIの処方、リターンズ | kyupinの日記 気が向けば更新

若い人へのSSRIの処方、リターンズ

若い人へのSSRIの処方について」の補足。
現在の精神科病院では、新薬が発売されるたびに古い薬は除外され、処方しようにもできないことも多い。その理由に院内薬局の自動分包機のカセットの個数が有限なので、1つ入れるごとに削除していかないと収拾がつかなくなることがある。特に総合病院などでは、内科、外科の新薬も大変な数なので徐々に削除していかないと院内薬局が運営できない。僕はそのような病院で働いていた時、精神科を代表して薬事審議会に出席していた。当時、レスタス、コレミナールなどが削除されてしまった記憶がある。まあ大きな病院はまだいい。院外処方箋も選択できることが多いから。

しかし、処方したことのない向精神薬を、院外処方箋で出すほど度胸のある若手医師がいるだろうか?という疑問はある。

結局、近年のSSRIや非定型抗精神病薬の発売のため、特に古いタイプの抗うつ剤が精神病院にはなくなりつつある。それは定型抗精神病薬も同様である。抗うつ剤ではトリプタノール、アナフラニールのような主力の3環系抗うつ剤は置いてあることが多い。トフラニール、ルジオミール、テトラミド、アモキサン、レスリンもほぼあると思われる。しかしアンプリット、ノリトレン、プロチアデンなどは置いてないことが多い(うちの病院でもノリトレンがなかった時期がある)。このブログではテシプールの話がほとんど出てこないが、うちの病院では一応ストックはある。副作用が少ないので、老人の患者さんに後輩医師が使うことがあるから。

ある時、僕は他病院の精神科部長と話していたら、アンプリットは何かのジェネリックと思われていたので驚いたことがあった。今や、SSRIは1stチョイスになっていて、猫も杓子もSSRIを処方するので、精神科に初診し、いきなりSSRIの副作用で酷い目に合う人は相当いるような気がしている。(参考

個人的に、定型抗精神病薬のプロピタン、クロフェクトン、クレミンが発売中止にならないかと心配している。これらは現在あまり使われてはいないが、有用な薬物だからだ。僕はクロフェクトンとクレミンはかつての吉富薬品(現、三菱ウエルファーマ)が販売しているので、けっこう面倒見てくれるような気がしている。真に売れていないデフェクトンですら、まだ販売しているから。三菱ウエルファーマは向精神薬では老舗のメーカーなので、プライドと責任を持って営業しているのではないかと思っている。まあ期待しているといった感じだ。

問題はプロピタン。これは販売がエーザイなので不安だ。エーザイはアリセプトなどの向精神薬は扱ってはいるのだが、いかんせん、プロピタンはジェネリックさえない薬で人気がなさ過ぎる。

そういえば最近、非定型精神病のオバちゃんで、クレミンからエビリファイに変更して、やはり時間が経ってみると良くないので、プロピタン150mg単剤にしたら急速にまとまった。プロピタンはきわめてSDA的な薬物、もうSDAといって良いほどの定型抗精神病薬で、副作用が出やすい人にはお勧めである。このようなニッチに位置する向精神薬はあると言うだけで価値がある。

いつだったか、知り合いの薬剤師さんと話していた時、その人が勤める病院の処方の話題になった。その病院ではパキシルがじゃんじゃん処方されており、古い抗うつ剤はストックさえあまりないという。パキシル40mgの処方も多いというし、ジェイゾロフトも最近は増えてきたと言うので、どうみてもうつ状態はSSRI主体に治療されている。抗精神病薬でも、リスパダールばかりだというし(それも12mgまで処方されている)、古い定型薬は種類もあまりないようであった。まあ今風ではあるが、僕はこれが良いとは思わないのだ。(過去ログ参照)

ちょっと思ったので、リストカットの人々の数を聞いてみた。実は、その病院では、そのような人たちがものすごくいるらしいのである。実は現時点だが、僕の患者さんのうちリストカットがある人はゼロだ。まあ、たまたまというのもあるが、大きな理由が2つあるような気がした。1つは、僕にはリストカットの人があまり来ないこと。これは偶然なのかよくわからない。僕にはなぜかピュアな過食症や解離の人もあまり来ないのである。僕は外来では相当数の患者さんを診ているし、僕の患者さんには若い人もけっこういるのだ。(僕の患者さんは複雑な双極性障害の人が多いような気がする)

うちの副院長にはなぜか解離の人が来る。また、僕の患者さんの場合、初診から既にリストカットのある人は、治療しているうちにリストカットが消失するか、途中で治療中断になって来なくなることが多い。この理由は謎だ。

ごく最近も1名パキシル治療中にリストカットが生じた患者さんが初診したのだが、何回か見ているうちに○○病院が良いと言うので、その病院に紹介した。これだと彼女に嫌われているように思うかもしれないが、彼女の母親の治療で鮮やかに良くなったので、母親にはすごく信頼されているのだ(症状性疾患)。

病院名を指定していたので、なぜその病院が良いか聞くと、2ちゃんねるの県別スレッドで誉めてあったのと、親しい友人がかかっているかららしい。その病院は良く知っているが、かろうじてうまいと思える人は1人(女医さん)しかいない。その女医さん宛てに紹介したのであるが、なぜか担当でない日に行ってしまい、他のドクターになってしまったという(という母親の話。2人で笑ってしまった)。

2chの病院スレッドの良し悪しの評価は相当に謎な部分が多いのだが、たくさんの人が行けばわりあい評価が上がる面はある。これは、行列ができるラーメン屋が美味いように見えるのと似ている。人が並んでいる病院に自分も並ぶわけだ。最近はそういうスレッドを全然見ていないのだが、以前の感想では、

① 極端に悪い病院が良いと評価されることはほぼない。
② 相当に下手なクリニックでも、時間をかけて診てくれる医師は人気があることがある。
③ 流行っているような精神病院は意見が分かれるが、トータルでは良い評価の方が多い。
④ 社会復帰に熱心な病院が相当に嫌われていたりするので驚くことがある。医師の一般的評価と異なるからだ。
⑤ 人気のあるカウンセラーがいた場合、一気に病院の評価が上がったりする。(謎)
⑥ クリニックは平均して精神科病院より評価が高いことが多い(これも謎すぎ)
⑦ 僕の友人で全然お風呂に入らない人がいるのであるが、近くに寄っただけでも夏は悪臭である。彼のクリニックの評判が良かったのには唖然。だいたい、彼は治療もうまくはない(2年ほど同じ職場だった)彼の場合、足元にキムコジャイアントを3つくらい置いていないと周りが耐えられないと思う。


こういう話は過去ログでもちょっと触れた。あと、治療途中でリストカットが出てくる人がほとんどいないことがある。実は、リストカットは治療し始めてから出てくることも多いので、これは確実に良い点だと思う。危なそうに見える人は最初から警戒して乱暴な治療はしないようにしているからである。(参考

知っておいてほしいのは、薬を服用したために統合失調症になることはないが、薬のためにうつ状態になったり、あるいはリストカットなどの自傷行為が出現することはありふれていること。危険な人にいきなりSSRIで治療を始めるからそうなるのだ。

パニックやうつ状態は穏やかな薬物治療でも良くなる方法があるのである。