教授とオーベン
精神科医になって、僕の診断や治療に大きく影響を与えた先生が3人いる。1人目は精神科の教授。他はオーベン(指導医)と総合病院にいたときに時々指導していただいた先生。その先生は現在は引退されている。
教授の診察を陪席していたこともあったし、症例検討会に出席していたので、診断の感性みたいなものを学んだ。移動になり県外の国立病院などに出ていた時、何が最も残念かと言うとこの症例検討会に出席できないことであった。何年か外の病院を廻って県内に戻ってきた時は退官されていたのである。とき、既に遅し。神がかり的診断を何度か見たが、このブログでも少しだけ出てきている。(カッコーの巣の上で(その2)参照) 治療については、あまり学べなかった。大学の研修医は2年間だけだったし、入院患者の主治医が教授であることなどなかったからだ。
オーベンの方がいろいろ学べたように思うかもしれないけど、そうでもない。精神科の経験年数がそれほどではなかったし、研究者肌で臨床的に良く知っているというほどではなかったから。僕は僕で研修医の後半はスランプの真っ只中だったし、彼のスーパーパワーについていけないと思った。ちょっと常人とは馬力が違うのである。研究している内容については臨床とは少し離れていたし、また質問するだけの知識もない感じで、あまり直接に教えてもらったことはなかった。ただ、アルバイト先では一緒に仕事をすることもあったし、彼のカルテもみることができたので、いったい何を考えて治療しているかはちょっとだけ知ることはできた。
ある日、入院中の男性患者のカルテをみる機会があった。なんと、1回の診察で、3ページも書いているのである。アルバイト先でそんな記載は普通はしない。書かれていたことは、病状の好転とリボトリール(=ランドセン)に関する考察と言うか「読み」みたいなものであった。
すごく長い記載だったが、なんとなく内容は覚えていて、ひとことで言えば、リボトリールの少量がこの患者をかなり改善させたと書いているのだ。なんと、文献の引用までしてあった。アルバイト先で、カルテに文献を引用している人がいるだろうか。いやいない。(反語)
その後、長い時間が過ぎ、僕はあの記載は間違いだと思うようになった。それから5~6年後のことである。僕は最初にうつ病の治療が上達した。5年目には、ほぼ今のスタイルが完成しており、とにかくうつ状態の治療だけはわりと早くからうまかった。なにしろECTまでするから、治せる範囲が広いのである。その次に得意になったのは、非定型病像を呈するうつ病および統合失調症、あるいはそのものズバリの非定型精神病である。その次は、慢性疲労症候群モドキのうつ状態である。(ブログの紹介に書いてある通り)
その長い3ページに及ぶ記載の患者さんは、今から考えると、まさに非定型精神病だと思う。僕は決してリボトリールで良くなったわけではなく、自然経過で改善したと思った。この病型は大きなサインカーブの病気の流れみたいなものがあり、なかなかそのバイオリズムを変えられないところがある。上下を緩和することは可能だけど。だから、その時点では僕はリボトリールの効果は重視していなかったのである。
ところがそれから数年して、その3ページの記載はまんざら間違いではないのではないかと思うようになった。彼があれほどにこやかになったのは、自然のバイオリズムも大きいが、リボトリールも何がしかの支援をしていたと今は思っている。
教授の診察を陪席していたこともあったし、症例検討会に出席していたので、診断の感性みたいなものを学んだ。移動になり県外の国立病院などに出ていた時、何が最も残念かと言うとこの症例検討会に出席できないことであった。何年か外の病院を廻って県内に戻ってきた時は退官されていたのである。とき、既に遅し。神がかり的診断を何度か見たが、このブログでも少しだけ出てきている。(カッコーの巣の上で(その2)参照) 治療については、あまり学べなかった。大学の研修医は2年間だけだったし、入院患者の主治医が教授であることなどなかったからだ。
オーベンの方がいろいろ学べたように思うかもしれないけど、そうでもない。精神科の経験年数がそれほどではなかったし、研究者肌で臨床的に良く知っているというほどではなかったから。僕は僕で研修医の後半はスランプの真っ只中だったし、彼のスーパーパワーについていけないと思った。ちょっと常人とは馬力が違うのである。研究している内容については臨床とは少し離れていたし、また質問するだけの知識もない感じで、あまり直接に教えてもらったことはなかった。ただ、アルバイト先では一緒に仕事をすることもあったし、彼のカルテもみることができたので、いったい何を考えて治療しているかはちょっとだけ知ることはできた。
ある日、入院中の男性患者のカルテをみる機会があった。なんと、1回の診察で、3ページも書いているのである。アルバイト先でそんな記載は普通はしない。書かれていたことは、病状の好転とリボトリール(=ランドセン)に関する考察と言うか「読み」みたいなものであった。
すごく長い記載だったが、なんとなく内容は覚えていて、ひとことで言えば、リボトリールの少量がこの患者をかなり改善させたと書いているのだ。なんと、文献の引用までしてあった。アルバイト先で、カルテに文献を引用している人がいるだろうか。いやいない。(反語)
その後、長い時間が過ぎ、僕はあの記載は間違いだと思うようになった。それから5~6年後のことである。僕は最初にうつ病の治療が上達した。5年目には、ほぼ今のスタイルが完成しており、とにかくうつ状態の治療だけはわりと早くからうまかった。なにしろECTまでするから、治せる範囲が広いのである。その次に得意になったのは、非定型病像を呈するうつ病および統合失調症、あるいはそのものズバリの非定型精神病である。その次は、慢性疲労症候群モドキのうつ状態である。(ブログの紹介に書いてある通り)
その長い3ページに及ぶ記載の患者さんは、今から考えると、まさに非定型精神病だと思う。僕は決してリボトリールで良くなったわけではなく、自然経過で改善したと思った。この病型は大きなサインカーブの病気の流れみたいなものがあり、なかなかそのバイオリズムを変えられないところがある。上下を緩和することは可能だけど。だから、その時点では僕はリボトリールの効果は重視していなかったのである。
ところがそれから数年して、その3ページの記載はまんざら間違いではないのではないかと思うようになった。彼があれほどにこやかになったのは、自然のバイオリズムも大きいが、リボトリールも何がしかの支援をしていたと今は思っている。