精神障害者と借金
精神障害者が罪を犯したケースでは、その時の精神状態を検討し責任が問えるかどうかが判断される。現在、医療観察法が施行されているので、以前に比べ、その処理のされ方がやや複雑になっている。今回は、この刑事責任については省略したい。
例えば、ある統合失調症の患者さんが殺人事件を起こしたとする。裁判の結果、責任が問えず精神科病院に入院になり、刑事責任がなかったとしても、その人を殺害したという民事責任は残るのである。(僕はそう理解している)
だから、その患者さんがかなり資産を持っていた場合、被害者は、ちょうど交通事故と同じように、逸失利益と慰謝料は請求できる。しかし、現実的には患者さんがお金を持っていることは少なく、ないものは取れない。よく子供が殺人事件を起こした場合、刑事責任は問えないが、その家族が家を売ってお金を払ったなどと、メディアで聞くことがあるだろう。
もう少し簡単なケースで考えてみよう。統合失調症の患者さんで、病状が悪化してくると、常識的にありえないようなことをして借金を背負うことがある。
例えば、友人にキャッシュカードを貸してしまうとか、名義を貸すとか、あまり親しくもない人の保証人になるなどである。酷いケースでは、サラ金(たぶん街金)に拘束されている?友人に呼び出されて、保証人になってしまったというものもある。
いったん、消費者金融に借金ができてしまうと、雪ダルマ式に額が増える。なぜ、こんなことになるかというと、社会的な判断力が低下していることによる。いくらか高い次元の能力がやや低下しているのである。
消費者金融以外に、消費者ローンで例えば実質1万円くらいの羽毛布団を20万で買うとか、ワケのわからないナベのセットを20万以上で買うなど色々なパターンがある。平凡に浪費が過ぎてカード地獄になってしまう人ももちろんいる。
僕は、かつて、患者さんの病状が重く、5年以上入院するようなケースで、なんとなく長期戦に持ち込んで借金をチャラにする天才であった。最近はほとんどないのであるが、これは今の患者さんがそこまで病状が悪化することが少ないということもある。
借金は一般的にもそうであろうが、借りている方が断然強い。まして持ってないならば。「無い物は返せない」、これが基本なのである。それに、彼らは借りていたとしても元金はたいした額ではない。金利が付きまくって数百万になっているだけなのである。
消費者金融の業者は、借りている人に定期的に手紙を出すなり、電話をかけなくてはいけないようなので、病院に連絡をとってくる。しかし、こちらはこういうのである。「直接、患者さんに電話をかけられては困ります。病状が悪くなりますので・・」
こういう風に言っておくと、少なくともあまり本人に直接は電話をして来なくなる。葉書は来るけど。電話はすべて主治医の自分が受けると言っておくのである。ここで精神保健福祉士くらいにまかせると、なめられてうまくいかない。
そのうち、そんな期間が数年、時に5年以上に及ぶと、消費者金融会社は、その債権をなんとかしないといけないと思い始める。この時点ではもう金融会社は弁護士にまかせていて、弁護士の名前で連絡してくることが多い。
消費者金融の会社からすれば、こういう債権が宙ぶらりんになっていることは非常にまずい。当時のサラ金業者は、莫大の利益を上げていて法人税も膨大な額であった。もし可能なら債権を償却し、節税しようと考えるからである。本人は精神病院に入っていてろくに話もできないし、それも何年にも及ぶので、遂に向こうから打診してくる。
僕は本人に高利貸しを面会させると、病状が悪化するという理由で決して会わせることはなかった。これは事実なので、正当な理由とは言えた。
精神病院の中は神聖なのだ。
なぜ今入院が必要なのか、あるいはなかなか働けるようにならないことを折に触れて言っておく。入院も長期になるし、いつ改善するともしれないことを伝えるのである。そういう風にのらりくらりとかわしているうちに、必ず金融会社はこんなことを言い始める。
何か診断書をいただけませんでしょうか?
こうして、患者さんの家族に連絡を取り、こういう診断書が悪用されることはありえないことと、借金が帳消しになり、本人の利益が大きいことを説明する。
こうして、診断書1通で借金がチャラになってしまうのであった。
正式に消費者金融の業者が債権を放棄すると、「債権を放棄しました」と書いた手紙が本人に来る。これで終わりなのであった。本人は借金がチャラになるは、消費者金融は正当な理由で放棄でき債権の半額を(税金から)取り戻すはで、良いことばかりなのである。
問題は、最初の頃、借りた店舗からの追い込みが激しいこと。以下、
kyupin = /(・x・)ヽ
消費者金融会社 = 金貸し
金貸しが頻繁に本人に電話をかけてくるので、僕が直接、電話に出る。
/(・x・)ヽ 「直接、患者さんに電話をかけられては困ります。病状が悪くなりますので・・」
金貸し 「なにお~ おまえ、舐めとるんか!!」
下っ端は、言葉遣いからなっていない。下っ端じゃ話にならんので、店長くらいに出てもらう。
/(・x・)ヽ 「ちょっと店長さんを呼んでいただけますか?」
なんと女性店長が出てきた。声からしても若い。
金貸しの店長 「この人、借りてから、1回も返されてないんですよぉ・・」
/(・x・)ヽ「それは、お気の毒です・・」
このようにして、まずは電話攻撃を封鎖する。彼らは、たまに病院にも来ることがあるが、残念ながら精神病院の閉鎖病棟には容易に入れないのであった。
消費者金融ではなく、まあ同じような素性だけど、消費者ローンの場合はもう少し紳士的だ。消費者ローンの返済が滞ると督促状が来る。やがて全然払わない状態が続くと本人に連絡が来るのである。その時はもちろん僕が出る。
この場合、いろいろ交渉してうまくいけば、商品を引き取ってもらってチャラと言うのが多かった。金貸しの兄ちゃんがはるばる病院までやってくる。例えば、20数万のナベの場合、そのナベのあるだけすべてを兄ちゃんに引き取らせる。まぁ、何もないより、ある方が償却しやすいのだろうと僕は思った。なぜなら、どう考えても人件費と交通費の方がかかっているとしか思えないことも多かったから。
あるときは、もうかなり痛んだラジカセだった。帰り際、彼らを見送るとき。
/(・x・)ヽ 本当にご苦労さまです。
といい、にっこりと笑った。お互い、いい仕事しているのである。
ある時、あるサラ金業者の人が、本質的なことに気がついた。たぶん、僕が相手をした中で、その人だけだったと思う。
/(・x・)ヽ 本人は働けないし、全然お金がありません。
金貸し ・・・。病院の入院費はどこから出ているのでしょうか?
うーん、鋭い。その質問はそのときが初めてだったのである。
/(・x・)ヽ 障害年金なるものがあり、2級でかろうじて入院費が出ているくらいでギリギリです。おやつ代くらいの余裕はありますが。
障害年金と言うのは事実であったが、もちろん「おやつ代くらいの余裕」というのは、kyupinのワナなのは言うまでもない。これも事実なのだが、相手の失言を誘っているのである。
金貸しとの電話のやりとりは100%録音していた。もし、そのとき、相手が「その障害年金を差し押さえる」とか、「おやつ代の余裕のある部分をよこせ」なんて言った場合は、出るところに出る覚悟はあった。
だいたい、東証の上場企業のサラ金業者が、精神障害者の障害年金を取り立てたなんていう話は、いかにもありそうで話が出来過ぎてるでしょ。
普段、朝日新聞は、精神病院を目の仇にしているが、こういう話なら、喜んでのって来ていただけると確信していた。
その時、本質的なことに気付いた人は、思わず沈黙しそれ以上何も言わなかったのである。彼は頭が良かった。何か変なことを言っていたら、たぶん新聞沙汰になり懲戒解雇になっていたと思う。そういうことを気がついただけ、凡人とは違っていると言えた。(そんなことが、新聞、雑誌で取り上げられると、上場企業としてのイメージダウンは計り知れない)
いろいろなことがあったが、録音していた電話のやりとりが役立つことが全然なかった。すべて、流れに沿って債権放棄になっていたから。僕は200万から400万までの借金は相当数チャラにした。最高は750万。でもトータルでは数千万で1億は行っていない。
のらりくらりとかわしながら持久戦に持ち込み、時間切れの勝利を狙うのがコツなのであった。
例えば、ある統合失調症の患者さんが殺人事件を起こしたとする。裁判の結果、責任が問えず精神科病院に入院になり、刑事責任がなかったとしても、その人を殺害したという民事責任は残るのである。(僕はそう理解している)
だから、その患者さんがかなり資産を持っていた場合、被害者は、ちょうど交通事故と同じように、逸失利益と慰謝料は請求できる。しかし、現実的には患者さんがお金を持っていることは少なく、ないものは取れない。よく子供が殺人事件を起こした場合、刑事責任は問えないが、その家族が家を売ってお金を払ったなどと、メディアで聞くことがあるだろう。
もう少し簡単なケースで考えてみよう。統合失調症の患者さんで、病状が悪化してくると、常識的にありえないようなことをして借金を背負うことがある。
例えば、友人にキャッシュカードを貸してしまうとか、名義を貸すとか、あまり親しくもない人の保証人になるなどである。酷いケースでは、サラ金(たぶん街金)に拘束されている?友人に呼び出されて、保証人になってしまったというものもある。
いったん、消費者金融に借金ができてしまうと、雪ダルマ式に額が増える。なぜ、こんなことになるかというと、社会的な判断力が低下していることによる。いくらか高い次元の能力がやや低下しているのである。
消費者金融以外に、消費者ローンで例えば実質1万円くらいの羽毛布団を20万で買うとか、ワケのわからないナベのセットを20万以上で買うなど色々なパターンがある。平凡に浪費が過ぎてカード地獄になってしまう人ももちろんいる。
僕は、かつて、患者さんの病状が重く、5年以上入院するようなケースで、なんとなく長期戦に持ち込んで借金をチャラにする天才であった。最近はほとんどないのであるが、これは今の患者さんがそこまで病状が悪化することが少ないということもある。
借金は一般的にもそうであろうが、借りている方が断然強い。まして持ってないならば。「無い物は返せない」、これが基本なのである。それに、彼らは借りていたとしても元金はたいした額ではない。金利が付きまくって数百万になっているだけなのである。
消費者金融の業者は、借りている人に定期的に手紙を出すなり、電話をかけなくてはいけないようなので、病院に連絡をとってくる。しかし、こちらはこういうのである。「直接、患者さんに電話をかけられては困ります。病状が悪くなりますので・・」
こういう風に言っておくと、少なくともあまり本人に直接は電話をして来なくなる。葉書は来るけど。電話はすべて主治医の自分が受けると言っておくのである。ここで精神保健福祉士くらいにまかせると、なめられてうまくいかない。
そのうち、そんな期間が数年、時に5年以上に及ぶと、消費者金融会社は、その債権をなんとかしないといけないと思い始める。この時点ではもう金融会社は弁護士にまかせていて、弁護士の名前で連絡してくることが多い。
消費者金融の会社からすれば、こういう債権が宙ぶらりんになっていることは非常にまずい。当時のサラ金業者は、莫大の利益を上げていて法人税も膨大な額であった。もし可能なら債権を償却し、節税しようと考えるからである。本人は精神病院に入っていてろくに話もできないし、それも何年にも及ぶので、遂に向こうから打診してくる。
僕は本人に高利貸しを面会させると、病状が悪化するという理由で決して会わせることはなかった。これは事実なので、正当な理由とは言えた。
精神病院の中は神聖なのだ。
なぜ今入院が必要なのか、あるいはなかなか働けるようにならないことを折に触れて言っておく。入院も長期になるし、いつ改善するともしれないことを伝えるのである。そういう風にのらりくらりとかわしているうちに、必ず金融会社はこんなことを言い始める。
何か診断書をいただけませんでしょうか?
こうして、患者さんの家族に連絡を取り、こういう診断書が悪用されることはありえないことと、借金が帳消しになり、本人の利益が大きいことを説明する。
こうして、診断書1通で借金がチャラになってしまうのであった。
正式に消費者金融の業者が債権を放棄すると、「債権を放棄しました」と書いた手紙が本人に来る。これで終わりなのであった。本人は借金がチャラになるは、消費者金融は正当な理由で放棄でき債権の半額を(税金から)取り戻すはで、良いことばかりなのである。
問題は、最初の頃、借りた店舗からの追い込みが激しいこと。以下、
kyupin = /(・x・)ヽ
消費者金融会社 = 金貸し
金貸しが頻繁に本人に電話をかけてくるので、僕が直接、電話に出る。
/(・x・)ヽ 「直接、患者さんに電話をかけられては困ります。病状が悪くなりますので・・」
金貸し 「なにお~ おまえ、舐めとるんか!!」
下っ端は、言葉遣いからなっていない。下っ端じゃ話にならんので、店長くらいに出てもらう。
/(・x・)ヽ 「ちょっと店長さんを呼んでいただけますか?」
なんと女性店長が出てきた。声からしても若い。
金貸しの店長 「この人、借りてから、1回も返されてないんですよぉ・・」
/(・x・)ヽ「それは、お気の毒です・・」
このようにして、まずは電話攻撃を封鎖する。彼らは、たまに病院にも来ることがあるが、残念ながら精神病院の閉鎖病棟には容易に入れないのであった。
消費者金融ではなく、まあ同じような素性だけど、消費者ローンの場合はもう少し紳士的だ。消費者ローンの返済が滞ると督促状が来る。やがて全然払わない状態が続くと本人に連絡が来るのである。その時はもちろん僕が出る。
この場合、いろいろ交渉してうまくいけば、商品を引き取ってもらってチャラと言うのが多かった。金貸しの兄ちゃんがはるばる病院までやってくる。例えば、20数万のナベの場合、そのナベのあるだけすべてを兄ちゃんに引き取らせる。まぁ、何もないより、ある方が償却しやすいのだろうと僕は思った。なぜなら、どう考えても人件費と交通費の方がかかっているとしか思えないことも多かったから。
あるときは、もうかなり痛んだラジカセだった。帰り際、彼らを見送るとき。
/(・x・)ヽ 本当にご苦労さまです。
といい、にっこりと笑った。お互い、いい仕事しているのである。
ある時、あるサラ金業者の人が、本質的なことに気がついた。たぶん、僕が相手をした中で、その人だけだったと思う。
/(・x・)ヽ 本人は働けないし、全然お金がありません。
金貸し ・・・。病院の入院費はどこから出ているのでしょうか?
うーん、鋭い。その質問はそのときが初めてだったのである。
/(・x・)ヽ 障害年金なるものがあり、2級でかろうじて入院費が出ているくらいでギリギリです。おやつ代くらいの余裕はありますが。
障害年金と言うのは事実であったが、もちろん「おやつ代くらいの余裕」というのは、kyupinのワナなのは言うまでもない。これも事実なのだが、相手の失言を誘っているのである。
金貸しとの電話のやりとりは100%録音していた。もし、そのとき、相手が「その障害年金を差し押さえる」とか、「おやつ代の余裕のある部分をよこせ」なんて言った場合は、出るところに出る覚悟はあった。
だいたい、東証の上場企業のサラ金業者が、精神障害者の障害年金を取り立てたなんていう話は、いかにもありそうで話が出来過ぎてるでしょ。
普段、朝日新聞は、精神病院を目の仇にしているが、こういう話なら、喜んでのって来ていただけると確信していた。
その時、本質的なことに気付いた人は、思わず沈黙しそれ以上何も言わなかったのである。彼は頭が良かった。何か変なことを言っていたら、たぶん新聞沙汰になり懲戒解雇になっていたと思う。そういうことを気がついただけ、凡人とは違っていると言えた。(そんなことが、新聞、雑誌で取り上げられると、上場企業としてのイメージダウンは計り知れない)
いろいろなことがあったが、録音していた電話のやりとりが役立つことが全然なかった。すべて、流れに沿って債権放棄になっていたから。僕は200万から400万までの借金は相当数チャラにした。最高は750万。でもトータルでは数千万で1億は行っていない。
のらりくらりとかわしながら持久戦に持ち込み、時間切れの勝利を狙うのがコツなのであった。