精神疾患の障害年金
精神障害の障害年金については、本来、知的発達障害、統合失調症、重度の躁うつ病に対し支給する想定があるような気がする。障害年金の中の書式がそれっぽいからだ。しかし実際は「日常生活能力の程度」が低い場合、特に疾患にかかわらず支給される。疾患名で決まるわけではない。
この疾患名に関しては、ローカルな面もあって、珍しい病名のケースでは無条件に落ちる場合もある。これは審査しているドクターの裁量にもより全県にわたって公平ではないと思われる面もある。だから、同じ病気、同じ病状でも、ある県では認められてある県では認められない場合がありえる。本当になんとかしてほしいものであるが。統合失調症の場合、県によるバラツキは最も少ないと思われる。
障害年金には障害基礎年金と、障害厚生(共済)年金の2種類がある。障害基礎年金はいわゆる国民年金の加入者、障害厚生(共済)年金は厚生年金または共済年金の加入者が障害者になったときに受けられるものである。注意してほしいのは、このどちらかに加入していない人は、障害者になっても年金を受けられないこと。初診が20歳以前の場合、無条件に国民年金に加入しているとみなされるため障害基礎年金を受ける資格がある。
知的発達障害は生来性であるため、たとえ50歳で初診したとしても障害基礎年金を受ける資格がある。知的発達障害者は普通、遅くても3歳児検診ぐらいで発見されるので、成人してから初診するなんてありえないと思うだろうが、以前はそういうことがあったのだ。僕は40~50歳の知的発達障害の患者さんの診断書を2回ぐらい書いたことがある。この人たちは障害年金が支給されるようになったが、はっきり言って精神科に来るのが遅すぎた。その損失は数千万になるだろう。(家族はそういうサービスがあるのを知らなかったらしい)
知的発達障害についてはIQにより決まるので、IQ50台の人なら落ちる場合がある。授産施設に入っているのに落ちるということがあるので、これはちょっと困る。落ちる場合があると書いたのは知的発達障害の場合、それ以外の症状、例えば、興奮、他人への暴力、てんかんを伴うかどうかとか、IQ以外の要素がからむからだ。日常生活能力の程度はIQだけでは決まらない。
統合失調症は未成年時に初診している場合は無条件に受給資格がある。精神科に初診しなくても、中学生時に小児科に拒食症くらいで初診していても初診とみなされる。初診時の診断名は、必ずしも「統合失調症」でなくてもよい。初診時に、まだ幻覚妄想などはっきりした症状が出ていなくて、うつ状態で初診なんてことはありふれているからだ。
最も問題なのは大学生である。現役で大学入学した場合、18歳で入学し22歳で卒業する。以前の大学生は、ほとんどの学生が国民年金に加入していなかった。親も仕送りが大変だしそんな余裕までないからだ。国民年金を支払ってなくて、学生時代の20~22歳時に統合失調症が発病した場合(未加入時に初診した場合)、受給資格がない。また卒業した後にフリーターのような状態で、国民年金も厚生年金も納めていない場合も資格がない。統合失調症の人で最も悪いパターンは、いったん就職するがなんとなく仕事を辞めてしまい、その後自宅でしばらくブラブラしていて、かなり時間が経ってからやっと精神科に初診するような場合である。このケースでは、いくら病状が重くても年金は受けられない。統合失調症はその病気の性質上、あんがい受給用件を満たしてない人が多い。
一般に障害基礎年金の場合、受給用件として加入しなけばならない期間の3分の2以上の保険料が納められているか、初診日の前々月までの1年間に保険料が納められているかのどちらかの条件を満たすことが必要である。国民年金の保険料は、本来、後でさかのぼって納めることが可能であるが、初診以後にまとめて払っても認められない。これができるくらいなら、みんなそうするだろうと思われるし、真面目に払っている人が報われない。もともと障害基礎年金にしろ障害厚生年金にしろ、あくまで保険の1つであることを認識してほしい。
大学生時代に障害者になり国民年金を納めていないため年金がもらえない人たちが裁判を起こしたが、全般的に負けていることが多い。彼ら(原告)は車椅子であることが多かった。詳しくはわからないが、おそらく交通事故などの身体の障害などであろうと思われる。国が国民年金の義務付けのアナウンスを怠っていた時期があり、その期間に生じた障害者のみ原告が勝利している。その後、特例で精神科でも年金が認められた人たちがいて、うちの病院でも2~3人いる。この年金の額であるが、一般の障害基礎年金、障害厚生年金よりやや少ない額になっている。障害認定日という概念があり、初診以後1年半しないと年金申請できない。