(これは、本日2026年5月6日に書いた詩です。)

『うれしい賓客』
街路や公園が
若葉色に染まった晩春のある日
僕が暮らす白いアパートに賓客が訪れた
母である
およそ一年半前に父を病気で亡くして以来
母は病院通いの生活の合間を見つけ
僕と昼食を食べたりマンションに泊めてくれたりした
でも
僕の住まいには興味がないようで一向に遊びに来てくれなかった
風向きが変わったのは
僕がなけなしのお金をはたいて
業者に壁のクリーニングを実施してもらってからだ
綺麗になったのはダイニングキッチンの壁と五枚の扉だが
それだけで充分
母の興味を惹きつけたようで
桜の花が散ってすぐ
母は六年ぶりに僕の住まいに訪れた
このときは突然だったこともあり
客用の布団も干していなかったので
泊まっていくことはなく夕方に帰ってしまったが
「次回は泊まるね」
と言ってくれた
その日から僕は大忙し
晴れた日には洗濯機を何回も回して
寝具類やカーテンを洗ったり
布団を干したりした
天気の良くない日も
お風呂や洗面所や窓ガラスを掃除して
薄汚れた室内を清潔にした
その結果
母は二十年ぶりに
僕の住まいに泊まることになったのである
最寄り駅で待ち合わせをし、
ファミリーレストランで二人で夕食
(包み焼きハンバーグディナー)
住まいに近いスーパーマーケットで買い物
夜は柏餅とお茶
たっぷり会話してから
十時半に就寝
朝は八時半に起きて朝食
(フルーツヨーグルトとミニクロワッサンとコーヒー)
その後、キッチンの汚れを発見され二人で掃除
それから外出の準備をして出発
父のお墓参りに行った
タクシーを使うと高いので無料送迎バスを利用し
お墓に着いたら水で清めた後
花とお菓子(柏餅)を供えた
「安らかにおやすみください」
と祈ってから急いでバスに戻った
駅まで着いたら三分ほど歩いて
中華料理の店に行き
ラーメンとかチャーハンとか餃子を食べ
満腹して電車に乗り
母の最寄り駅で別れた
そのまま電車に乗ってから帰宅すると
母から電話をもらった
「また泊まりにいくからね、
洋服は衣装ケースに片付けること」
「はい了解です、お母さん」
著者・霧島葵(53歳)
著作年月日・2026年5月6日
(C)Aoi Kirishima.