清潔そのもの。


外観は古い印象だけど、中に入ればそこは真っ白な清潔空間。壁も家具も白く、まるで新築のようだ。その家特有のニオイがなく、かといって変に香が焚かれているわけでもなく、一瞬でこれからの時間が快適に過ごせるだろうという予感がして嬉しくなった。


とはいえ実は、ここにたどり着くまでに余計な時間を食って疲れていた。場所がわからないので電話をして道順を聞いたがうまく覚えられず、結局マンション名だけ覚えてGoogleマップで検索。マップに頼って先を急いだ。


しかしたどり着いた先は明らかにマンション名が違う。そこで私はマンション名を間違って入力していたことに気づいた。道順もマンション名も覚えられないなんて、と自分が情けなくなるが、まあいつものことだと忘れることにする。


案内され、清潔空間の真ん中に置かれたソファに座る。出された冷たいガス入りの水を飲む。ああ美味しい。そんな私の姿を、マダムは静かに見守っている。少し雑談をして、自分が落ち着いたことをさりげなく告げた。


ソファの右側に引き戸がある。その戸を開けると施術台が左右に二つ置かれていた。向かって右側の方が幅が広い。どうやらこちらを使うようだ。入ってすぐ左にある細長いロッカーからマダムが薄いピンク色の患者衣を取り出す。戸が閉められ、私はその場で着替えを始める。その患者衣は上下に分かれていて、上着の片面にはファスナーが、もう一方にはマジックテープがついている。さて、どちらが前だろう。わからないので適当に着てみた。


着替えが終わり、トイレを済ませ、いよいよ治療が始まる。台には清潔なタオルが敷かれている。トイレのタオルもそうだったが、きっと高級品なのだろう。感触がとても良い。足元には円柱形のクッション、頭の方には低い枕、胸のあたりにもクッションが置かれている。うつ伏せで横になると顔面だけ若干浮くような格好だ。期待に胸がふくらみ、またもや嬉しい気持ちになる。


ふと横を見ると、何やらほわほわした海綿のような物が置かれていた。「これがもしかして?」「はい、艾(もぐさ)です」そう。これが噂の100g25,000円の最高級艾だ。触らせてもらった。あ、ふわふわしている。「かわいい」思わずそんなことをつぶやく。艾というものは黒緑みたいな色でもっとガサガサしているのだと思っていた。しかし実物は想像とまるで違う。イメージの恐ろしさを知った。


艾同様、マダムは鍼も見せてくれる。体に刺す鍼の幅はなんと0.2mm。見た目は髪の毛のよう。そんな細い鍼だから、刺してもさほど痛くないという。試しに腕に刺された。息を吸って吐く。その吐く息とともに鍼が刺されると、痛みはほとんど感じない。なんだ、痛くないじゃないか。艾のかわいさとともに鍼の感触も知る。うん、これなら痛みに悶絶することはなさそうだ。


一度お会いしてたくさん話をしたからマダムのお人柄はわかっている。さらに鍼灸の実体も知った。初めての体験だけど、私は大きな安堵感に包まれる。これからの60分、一体どんな治療が行われるのか。期待に私の胸は高鳴る。


つづく