「あの、藍田さんは、ここの管理人をされているんですよね。

お客さんが重ならない、ってことは、管理上、いいんですか。

いや、俺、こうして来る分には誰もいないことが嬉しいんだけど、

こう、経費とか、どうなんですか。」

 「そうですね、一般的な基準だと、良くないと言われるかも

しれません。でも、田中さんの基準だと、いかがですか。」

 

 言葉に詰まる。

 モヤモヤした気持ちをぶつけたら、そのモヤモヤに正面から

向き合うことになった。

 今まで、逃げていたのに。

 

 「俺の基準、ですか。そりゃ、経費が落ちないとうまくないから、

経費を超えるものを稼がないと。」

 「そうですね。では、田中さんにとって、経費を超えるものとは

なんでしょうか。」

 

 答えられなかった。

 答えたくなかった。

 青臭い、夢を語るのは大学時代で終わりにしていた。

 全ては、誰もが進む「普通」の道に続いている、そう思い込みた

かった。

 

   続く