お雛様どこいったの?
小学生の私が帰ってきたばかりの母に尋ねました。
母は黒っぽいコ-トを着て靴を脱いだばかりでした。
今年はどうしてお雛様を出さないんだろうと探しても見つからなかったので
帰ってきた母を出迎えてそう聞いたのでした。
母は
「知らない」と笑ったような困ったような顔で言いました。
知らないと・・・
そこからどういう会話を続けたかは覚えていないのですが
その日以来 お雛様の事はいっさい触れなくなり大人になりました。
2年ぶりに飾った内裏雛です
久しぶりに暗い函の中からお出ししたお雛様も
大きく深呼吸なさっているようです
そして、隣に並んだ母の顔も笑ったように私には見えました。
お話を戻しますね、母がなぜ「知らない」と言ったのか。
この頃の我が家はなかなか大変な時期で
父の仕事がうまくいかなくなった頃でした、小学生の私も
うすうすその空気は感じ取っていました
だから、そうかあの段飾りの大きなお雛様はもうこの家には無いんだな
私の話を断ち切るようにくるりと背中を見せてコ-トを脱ぐ姿に
もうこの話は終わりなんだなと理解しました。
ちょうどこの頃です、私のピアノも急に無くなっていたのは。
後にピアノは ものは違いますがが戻ってきました、
けれどお雛様はどんな形にしても戻ることはありませんでした。
お綺麗なお顔ですね
そして、月日は流れ
私は結婚し
私は出戻り( `ー´)ノ申し訳ない
ある日、母が言ったのです「お雛様買おうと思うの」
え!どうして?
私はもう中年の出戻った女子、今さらいいんじゃない?という気持ちです。
「いらないわよ、もったいない」
それでも母は頑なに首を振り「買わないとだめなの」
結局、ある日大きな箱が届き
それがこの内裏雛だったのです。
いつの頃からか我が家にいらっしゃる大内雛さま
万年の亀さんも上ってきました。
母はずっと長い間忘れていなかったのですね
胸のどこかに あの時の私の「お雛様どこいったの?」といった顔が
忘れられなかったのでしょう。
何十年も経って母はやっと心の重荷を下ろしたのでしょうか
母のせいでもないし能天気な私は次の日にはもう忘れていたのに。
ピアノだって「ピアノ教室に行かなくていいから嬉しい」と母に言った気がします
泣いている母を慰めるためと言うより本音です^^
この2年の間 お出しできなかったけれど
これからはちゃんと飾らせていただきます、母の気持ちがこもった形見
なのですから。
おり~ぶ
雪予報だったのにけっきょく雨だった日に歩いた服装は
昔かった薄手のダウンコートです
今年でお別れです、長い間ありがとう






