真魚達が村の畑に戻って来た。
「あの岩の下か…」
真魚が指で示した。
その場所は、美紗の家の場所であった。
「やっぱり…そうなんだ…」
美紗がつぶやいた。

「佐伯様は、何でも分かるんだね…」
綾太がそう言って嵐を見た。
「俺も分かっておるぞ…」
嵐も一応、答えておいた。
「守り人か…」
真魚が美紗に聞いた。
「母からはそう聞いています…」
「あれだけの波動…よく耐えておる…」
嵐が何かを感じている。
後鬼は力の渦と言っていた。
確かにいろいろなものが、集まっているようだ。
「母の身体は、大丈夫なのか…」
真魚は母の身体を、気遣っていた。
嵐が言う、耐えると言うこと。
それと、母の身体は無縁ではない。
「ええ、今は何とか…」
美紗はそう答えたが、不安は感じていた。
畑の間を抜け、小さな小川の側を山側に向かった。
そこに美紗の家があった。
美紗の家の裏には、大きな岩があった。
幾つかに割れた裂け目を、注連縄と紙垂で封印していた。
「お待ちしておりました…」
美紗の家から、女が現れた。
「母の紗羅でございます」
真魚に向かって、丁寧に頭を下げた。
「佐伯真魚だ、こっちが嵐だ…」
「おや!」
紗羅が嵐を見て驚いている。
「俺は神だぞ!」
犬と言われる前に、嵐が自ら事実を伝えた。
「これは…また…」
紗羅は一瞬驚いたが、直ぐに笑みを浮かべた。
すぐにその事実を受け入れた。
それは、紗羅がただ者ではないという証だ。
「父さんは?」
美紗は父がいないことに気がついた。
「山に薬草を摘みに…」
「ついでに山菜も採ってくるつもりよ…」
紗羅は、真魚達をもてなすつもりであろう。
「嵐がお腹空いてるみたいなの…」
「ご馳走してあげて…」
美紗は嵐を見ながら言った。
「契約は違えぬぞ…」
嵐は二人にそう言った。
「何が眠っている…」
真魚が単刀直入に聞いた。
「私には分かりません…出口だと聞いております…」
紗羅がそう答えた。
「これは…面白い…」
真魚が嵐を見て笑みを浮かべた。
「開けてびっくり…というやつだな…」
嵐がそう言って、笑っている。
「まさか…出口を開くおつもりでは…」
紗羅がそれを拒否している。
「何か見てみぬ事には、分からぬではないか?」
嵐が紗羅にそう言った。
「ですが…」
紗羅が困っている。
それには理由があった。
「古に、閉じた者がおるのであろう?」
真魚はその理由に気付いている。
「閉じた者がいるなら、また閉じればいい…」
真魚は片目を瞑った。
安心しろ、と言っているようだ。
「あなたって…お方は…」
紗羅が驚いている。
「そんな事…できるの…」
美紗が、その事実を知りたがっている。
「そこにも…面白い術を使う奴がいるではないか…」
嵐が綾太を見た。
「お、俺は、やだよ!どんな化け物が出るかも、わからないんだろ!」
「全く、情けない奴だ…」
綾太の嫌がっている様子を見て、嵐が笑っていた。
「そうか…そうなんですね…」
力が抜けたように、紗羅が急に震えだした。
「どうしたの母さん、大丈夫…?」
美紗が母の身体を支えた。
「方法は一つだけではない…」
真魚がそう言って笑った。
「どういうこと…?」
美紗が戸惑っている。
美紗と綾太だけが、蚊帳の外であった。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-