飛炎が闇に紛れながら矢を放っていた。
「隠れて叩くのは性に合わないが…」
そこに突然、嵐が現れた。
瞬きをする瞬間、それほど早い。
「一度、引くぞ…乗れ」
そう言う嵐の背中には、先に疾風が乗っていた。

飛炎が背中に乗ると、あっという間に館の裏に飛んだ。
誰にも見えない。
霊力に敏感な者であれば気づいたかも知れない。
だが、その姿を見ることはない。
「なんて速さだ…」
飛炎と疾風が驚いている。
「俺は神だぞ…」
嵐が自慢げに事実を言う。
「その気になれば、倭の兵などあっと言う間だ…」
嵐の言っていることは嘘ではない。
人がどうこう出来る速さではない。
だが、そのおかげで飛炎と疾風は心にゆとりが出来た。
「言ったであろう、問題は倭ではないと…」
後鬼が二人の心を感じていた。
その言葉が再び二人を不安にする。
「それほどなのか…その魔物は…」
疾風が後鬼に尋ねた。
「うちらでも骨が折れる…」
「よく言うわ、いつも見ておるだけのくせに」
嵐が話に横やりを入れた。
「嘘ではないぞ、うちが戦うとは言ってない…」
「何だか自慢している様に聞こえたのじゃが…」
その表情に嵐が呆れている。
「人がまともに戦って勝てる相手ではない」
前鬼が話をまとめる。
「闇と呼んでいる…」
真魚が二人に言った。
「闇…だと」
「奴らは黒い霧のように形を変える」
「形など元々ない…」
「だが、人の心を写す…」
「人の心を写す…?」
さすがの疾風も真魚の説明を理解出来ない。
「その者の恐怖に形を変える…」
「それは、この世で一番恐ろしいと言うことだ…」
「この世で一番恐ろしいもの…」
疾風が考えている。
「ならば、見る者によって形が違うのか!」
「そうで無ければ意味が無い…」
疾風の疑問に真魚が答える。
「意味が無い…」
疾風が混乱している。
「人は心で感情を生み出す」
真魚が二人を見ている。
「だが、恐怖も生み出す」
「それを…食らうのか…闇は…」
「そうだ、しかも生命と一緒にだ…」
真魚の言った答えに飛炎が唖然としている。
疾風は口を開けたまま閉じていない。
二人の心象には、闇に食われる自分がいるに違いない。
「来るものは仕方が無い、使わせてもらう」
真魚が恐ろしい言葉を言った。
その時…
「!」「!」「!」
同時に視線を合わせた。
「噂をすれば…」
視線を外に向け、真魚に笑みが浮かべていた。
「こんな時に…笑っているのか…」
「本当に恐ろしいのはこの男かも知れない…」
疾風はそう感じていた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-