気がつくと楠が風に揺れていた。
全てが夢の様であった。
身体が熱い。
身体が振動している。
神の波動はまだ残っている。
夢ではない。
我夢の心には確かな証が存在していた。
「夢幻」
真魚がその刀に名を付けた。
「これはお前の刀だ」
真魚が我夢に刀を渡した。
「俺の…これが…」
我夢は驚いている。
「お前が打つ必要があった」
「その意味が分かったであろう」
真魚が我夢の心に問いかける。
言葉は言ってない。
だが、我夢の心にそう伝わってくる。
「わかる」

我夢の心の中にあるもの。
全てがこの刀に集まっている。
鉄斎はそれを見ている。
真魚の心を感じている。
彩音は踊り疲れて嵐の側で眠っていた。
「いつの間にか大きくなった」
いつしか鉄斎の心も晴れっていた。
佐伯真魚。
何という男だ。
鉄斎は改めてそう思う。
その光に恐怖さえ感じはじめていた。
星が美しい。
星の光以外、光りはない。
空が全て星だ。
光は星で、星は光であった。
木の上を跳んでいた影が、突然止まった。
「ん!」
前鬼であった。
「何という気配じゃ…」
後鬼もそれに気がついた。
それは森の闇の中に潜んでいた。
闇に潜む闇の気配。
その入り口は小さい。
「真魚殿が言っていたのはもしや…」
前鬼の言葉には疑いが含まれていた。
だが、その疑いが晴れるまでに時間はかからなかった。
その奥に巨大な闇が潜んでいる。
それが入り口から漏れている。
前鬼はそれを感じている。
「間違いない…」
前鬼が考え込んだ。
その気配の主を確かめる。
それを考えていた。
「この気配は闇そのもの…」
後鬼がその答えを言った。
「真魚殿に報告した方が良さそうだな…」
前鬼はそう判断した。
「闇の扉が開くかも知れぬ…」
後鬼は既に相手の力を見ていた。

「行くぞ!」
そう言うと前鬼が跳んだ。
その後に後鬼が続いた。
手に負えぬかもしれぬ。
そう判断した。
それほど奥にある闇の力は大きい。
光と闇。
「引き合っているのか…」
前鬼によぎる不安。
それを直ぐに消し去ることは出来なかった。
「強き光は濃い影を生み…」
「闇の中で、光は一際輝く…」
前鬼はその事を考えていた。
「この世も動いているのだ」
前鬼はそう考えていた。
続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-