多感な思春期の頃から結婚が決まるまでの最大の関心事の一つ。それは、「将来の結婚相手」だった。
どんな人が自分の夫になるのか、性格は?仕事は?はたまた国籍は?今のBFは、将来を共にしていく人となるのか?それとももしかしてもっと素敵な人が現れるのか。

これを知るために、私は奔走した。そう、占いにハマッたのだ。
四柱推命に手相、タロット、霊感占いエトセトラ。「良い占い師がいるよ」という噂を聞けば、同じような仲間と徒党を組んで西に東に時には列車やバスを乗り継いで駆けつけた。
もちろん、人に頼る占いだけでなく、女性誌などで占いの特集が組まれているのを発見すると、即座に購入したし、占いの専門誌を買ったこともある。タロットカードだって持っていた。

そんな人間にとって、「将来の結婚相手が夢で見られる」なんていうジンクスがあると知ったら、飛びつかない訳が無い。
それは、留学先での出来事だった。
ホストファミリーの知人の女性が結婚した。美しい教会での結婚式の後、二次会の席。ワインが並ぶテーブルの隅で、ホストマザーがそっと囁いた。

「モモ、知ってる?ウエディングケーキの欠片をね、今夜枕の下に置いて寝ると、彼が夢に出てくるの」
「彼?彼って?」
彼女は悪戯っぽくウィンクして答えた。
「あなたの将来のハズバンドよ」

わーーーー!こりゃあもう、大変だ。何が何でも、あの舞台の中心にあるウエディングケーキを強奪してこなければならない!
生クリームだらけになろうとも、明朝、枕に蟻がたかっていようとも、絶対私はやるっ!!
突然大興奮で舞台に突入しようとする日本娘を制しながら、ホストマザーは慌てて言った。
「大丈夫。帰りにちゃんともらえるから」

その夜。白い小箱に入った一口サイズのパウンドケーキをそっと大きな枕の下に忍ばせて、ワクワクしながら眠りについた。
そして、翌朝。ベッドの上で、ひしゃげたケーキを目の前に、煩悶する私がいた。
前夜、喜びと期待のあまり狂ったようにダンスを踊ったせいで、疲労は極限まで達し、爆睡してしまったのだ。

夢は見たような気もするのだが、遥か昔の記憶のように頭の奥底に沈みこみ、その色合いさえどうしても思い出せない。
落胆と失望で、げっそりした顔をして朝食の席についた私を見て、ホストマザーは言った。
「そんなにがっかりしないで。大丈夫よ。そのうちわかるわ!」
……確かに。