ここ数年の専業主婦生活の中で、ひどく驚いたことがある。
ソフトな名前になっていたり、異なる名称であったりはするけれど、明らかに「自己啓発系」のセミナーに参加している主婦が、やたらと多いのだ。

種類は多岐に渡り、「対自分」はもちろん、新米母親ならば必ず通る、子育てに対する不安に上手くつけこんだセミナーも数多い。高額なものもあるし、最初は無料、なんてものもある。

共通しているのは、得体の知れない講師が、最終的には営利目的で経営しているものがほとんどであるということだ。
ちょっと考えればわかるそんなものに、嬉々としてお金を払って参加している人の話を聞くたびに、「ああ、ここにもいた……」と、暗澹とした気持ちになってしまうのである。

若くして結婚した主婦ならわかる。なぜ学歴や社会経験もある人までが……と思っていたら、演劇をやっている後輩から驚くような話を聞いた。

演劇界では知らない人はいない、平田オリザ氏のワークショップに参加したとき、彼は「体を揺らす」という運動をしたそうだ。前と後にそれぞれ人がついて、行為者が「気をつけ」の姿勢のまま前後に倒れこむのを支え、反対側に押し出すのだ。行為者は完全に身を任せたまま、時計の振り子の様に2人の間を行ったり来たりする。
慣れてきたら、だんだん倒れる角度を急にしていく。
最初は怖いが、慣れてくるといくらでも倒れられるようになり、おまけに気持ちが良くなってくるらしい。

オリザ氏は、その「気持ちの良さ」を指摘した。
こういう「体を使った運動」は自己啓発セミナーや新興宗教の集会などでよく使われるテクニックなのだそうだ。
名門大学に入るような人だと、肉体の教育などあまり受けてないことが多いので、コロッとだまされるのだそうだ。

そりゃあ、毎日の家事育児でぐったり疲れて自信を失いかけているところに、人から認められ、受容されたら気持ち良いに決まってるさ。評価されない、延々と続く無賃金強制労働で暗澹とした世界が、光に包まれたような気になるに決まってるさ。
おまけに、時に自分や相手のカラダ使って、未体験ゾーンに連れて行ってくれるのだもの「ああ、こいつはすげぇ!ああ、私は生まれ変わったのだわ!」と勘違いするに決まってるさ。

でも、私には得体の知れないメソッドで暴利をむさぼる、はっきり言って大学などで専門的な勉強を積んだわけでもない出自も不明の人に身を任せ、自分が稼いだわけでもない高いお金をつぎ込む余裕などない。そんなことに投資する位なら、大好きな人達と美味しいものでも食べて馬鹿笑いするほうがよほどスッキリするに違いないもの。第一そんなものがはびこるのは、日本に確固たる宗教が無いからだ!(と、無宗教ながら思うのである)

ちなみにオリザ氏曰く、自己啓発セミナーは、もともとベトナム帰還兵の精神治療をするためのメソッドなので「劇薬」にもなるとか。くわばらくわばら。