「ジャジャジャジャーン ジャジャジャジャーン!」
誰もが知っているであろう、この旋律。
ベートーベンの「運命」である。

どうやら、この「ジャジャジャジャーン」、曲の中でひたすらくり返し使われているのは有名な話、らしいのだ。
言われて慌てて聞きなおしてみると、なるほどなるほど!
手を変え品を変え「ジャジャジャジャーン」の嵐!

一体何回使われているのかと、指折り数えてみたけれど、こりゃとてもじゃないが数え切れるものじゃあない。
最初の10数回数えたところでその速さについていけずに挫折していたら、カウントを完遂した御仁がいるらしい。世の中、物好きもいたものだ。諸説咲き乱れるこのミステリー、少なくとも200回以上は「ジャジャジャジャーン」が繰り返されている、らしい。

「音楽の可能性の追求」とか、「芸術性」とか、なんやかんやと難しい解釈はあるだろう。でも、これだけは間違いはない。

ベートーベンは「しつこい男」だ。

こんな男に興味を持たれた日にゃあ、えらいこっちゃに違いない。
だって、長い楽章のほとんどを「ジャジャジャジャーン」で埋め尽くした人ですぞ。想像しただけで目眩がする。

こちらの気持ちなどお構いなしに、朝から晩まで「好きだ好きだ大好きだ~!」攻撃にあうこと必至なのだ。
同じテンションでついていける10代20代のお盛り期ならば、共鳴しあって激しく燃え上がるのだろうが、さすがに30代に入ると疲れてくる。
「ちょっとちょっと……相手の様子も見てよぉ……」なんてため息混じり。しまいにゃほうほうの体で這うように逃げ出そうとするに違いない。

もちろん恋愛に限ったことではなくて、社会生活全般においてなのだが、このテの脂っこい男に出会うと、思わず遠巻きに「へぇへぇ。勝手にやっておくんなまし。でも、こっちには来ないでね」と怯えながら呟いて、ひたすら逃げ腰及び腰になってしまうのだ。

「うぜっ……」と思いこそすれ、少なくても「まあ、強引で素敵♪」とか「粘り強くて頼もしいわぁ~」にはならないのである。
「引き際」と「ほどほど」を見極めて、時にはこちらから追いかけるように仕向けてくれる、そんな余裕を持った人に「大人の男」たる所以を感じてしまう昨今。

寝ても冷めても「おっぱいよこせ」と追い掛け回され、挙句、疲労困憊してベッドに倒れこんだ体に追い討ちをかけるようにべったりと張り付いてくる、我が家の息子達だけで「しつこい男」は充分なのです。