わが夫(英国人)の
本年のお誕生日ケーキ、
ここ数年作成をお願いしていた
近所のお菓子職人さんは
めでたくご出産したばかり。
でも待ってくれ!
わがお散歩仲間の
毒舌夫人は元凄腕料理人、
得意分野はズバリ『デザート』!
(ここまで詳細は
「奥様奥様、それでまあ
色々ありましてね、去年まで
買っていたケーキが今年は
買えなくなってですね、でも
わが夫は今年も誕生日に
チョコレートケーキを
欲しておりましてですね」
「わかったわNorizo、
大丈夫、安心しなさい」
「おっ、それは・・・」
「私が秘伝のレシピを教えてあげる」
そうじゃないんですよ。
「違うんです違うんです、
私は自分でケーキを
作りたくないっていうのが
この話の前提でして・・・」
「なんで作りたくないの?
大丈夫、簡単なレシピだから」
「製菓技術に秀でた方は
皆それを言う!いいですか、
あなた方にとって『簡単』でも
私にとってはそうじゃないんだ」
「あなたケーキを
焼いたことはあるんでしょ?」
「それはあります、一応
ケーキらしい物体は
焼き上がりました、
しかし過程を楽しめなかった」
あの大量のバターと砂糖を見ると
自分は自分の愛する人に
食べさせるつもりなんだと
戦慄さえしてしまってですね。
「平気よ、これはそんな風に
楽しむ・楽しまないが
関係ないくらい簡単なレシピだから」
「とか言ってえ、まず卵白を
泡立ててえ、次にバターを
クリーム状になるまで
練ってえ、とかなんでしょう?」
「違う違う聞きなさい、いい?
まずスーパーに行きます」
「はい」
「そして製菓コーナーに行き
『簡単ケーキミックス』を買います」
そう来たか。
「奥様?製菓のプロとして
その発言は・・・奥様?」
「プロとして言ってあげます、
最近のケーキミックスは
本当によくできている」
奥様曰く、そりゃ自分は
粉とたまごとバターから
いくらでもケーキを作れるけれども、
この場合のNorizoのような人間に
大事なのはとにかく
気負うことなくおおらかな心で
ケーキを焼くこと、
ケーキミックスを使えば
間違いはない、
きれいに焼き上がった
ケーキを見て達成感を味わって
「あとはデコレーションに
注力すればいいのよ。
ガナッシュなんて生クリームと
チョコレートで簡単に作れるし
なんだったらそれも
『デコレーションミックス』を
使うことだって可能よ」
「でもそれは・・・
どうなんでしょう、
夫は私がケーキを焼いたら
『手作りだ』ってきっと
喜びますけど、それは
果たして『手作り』と
称して許されるんですかね?」
「あのねえアナタ、
世間の人の大半は
ケーキミックスを使って焼いた
ケーキと使っていないケーキの
味の差なんてわからないわよ」
「プロがまたなんてことを」
「そりゃお店をやっていた時は
一から作ったわよ、だって私は
そういうのが得意だし
苦にならないし、でも
引退してからはね、自宅で
パーティーとか開く時、
なんでも自分で
やろうとしたら大変でしょ?
ケーキミックスを使う時もあるわよ、
毎回毎回大評判よ、コツはね、
レシピを聞かれたら
こういう感じにニヤリと笑って
『秘密』って言うことよ」
・・・奥様、本当にいい笑顔でした。
「でも私はこう見えてそういう時
嘘をつくのが下手なんですよね」
「じゃあ私から秘伝のレシピを
教わったって言いなさい、
絶対他の人に教えないって約束で
伝授されたって言えばいいでしょ」
・・・それなら可能か・・・?
これは一度試してみるべきか・・・?
でも倫理的にそれはいいのか・・・?
変なところで融通がきかない私です。
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