⇒前回の話
1週間後、莉多子の婚活サロンを翔子が訪問した。
「調べた結果、やはりバリカタ子と安智利恵子は同一人物であることが判明しました」
「本当に利恵子さんが今回の事件に関わっているの?」
「ええ。メッセージを復元したところ、貴子さんに指示を送っていたことが判明しました。山小屋に監視カメラや盗聴器を仕掛けたのは利恵子で間違いないでしょう。また、山小屋からプロジェクターも発見しました」
「プロジェクター?」
「プロジェクションマッピングをご存知ですか?」
「ええ。映像を建物とかに映し出すことよね」
「はい。貴子が自殺する直前、我々はリカティの姿を目撃していますよね。あれはプロジェクションマッピングだった可能性が浮上してきました」
「えっ!?」
「利恵子は貴子さんのメンタルが不安定だったことを知っていた。それで、リカティのコスプレ姿の和歌子さんの映像をプロジェクションマッピングで流したのだと思います。和歌子さんのSNSを見ると、リカティのコスプレ動画が上がっていたので、それを利用したのでしょう」
「そうなのね・・・。じゃあ、クス男が最期に見たリカティの姿も・・・?」
「映像だった可能性が高いですね」
「でも、利恵子さん、一体なぜそんな真似を?元々、私のことを嫌っていたけど、カウンセリングで和解したはずよ。最近、ファイバーエージェントに就職して、順風満帆だと思っていたのに」
「実は、利恵子はファイバーエージェントに入社してないことがわかりました」
「えっ!?」
「しかも、利恵子は自宅におらず、現在行方をくらましています」
「そうなのね・・・。一体、利恵子さんに何があったのかしら?」
「莉多子さんは利恵子が婚活ブログを書いていたことをご存知ですか?」
「いえ、知らないわ」
「貴子とのやり取りから、利恵子が婚活ブログを書いていることがわかりました。そのブログを見ると、利恵子はもともと莉多子さんのブログのファンだったようです。利恵子の親は資産家で、利恵子が働かなくても困らない遺産を残していました。しかし、利恵子はこの先一人で生きていくのが不安になって、婚活を始めることにしたのです。情報を集めるうちに出会ったのが莉多子さんのブログでした」
「利恵子さんが元々私のブログのファンだったなんて。でも、一体いつからアンチになってしまったのかしら・・・」
「利恵子は莉多子さんがブログで紹介していた婚活アプリを始めています。しかし、全然いい出会いがなくて、挙句の果てにアプリで知り合った男に騙されてしまったのです」
「そうなのね・・・。確か、利恵子さんはアプリで誰とも出会えなかったと言っていたけど」
「ええ。利恵子は相手に直接会うことなく、お金をだまし取られています」
「えっ?それってどういうこと?」
「まず、利恵子はハブと名乗る男とマッチングします。ハブは海外在住の外国人のふりをして、こまめに利恵子とやり取りをしていました。初めて男性とマッチングした利恵子はすっかり舞い上がり、ハブに夢中になってしまったのです」
「えっ、待って。もしかしてハブって・・・今回被害に遭ったあのハブ?」
「ええ。ハブは利恵子に会うために日本に行きたい。でも、お金がなくて会いにいけないと言い出し、利恵子はハブに言われるがままに渡航費用の100万円を振り込んでいます」
「ハブって財布からお金を抜き取る小悪党だと思っていたけど、そんな悪どいこともやっていたのね。そもそもハブって外国人だったの?」
「いえ、国籍は日本です。濃い顔立ちなので外国人のフリができたのでしょう。100万円を振り込んだらハブとの連絡が途絶えてしまい、利恵子は騙されたことに気づきます。そして、落ち込んでいた時に知り会ったのがクス男でした」
「え・・・まさかクス男って・・・」
「ええ。ハブに騙されて落ち込んでいた利恵子は、クス男とのやり取りにハマっていきます。クス男は口が上手いので、すっかり信用していたようです。利恵子はクス男に、かつてアプリで出会った男にお金を取られた話をします。するとクス男は、自分は投資のプロだから、お金を預けてくれたら数倍にできると豪語するようになったのです」
「確かクス男は自称、外資系金融勤務だったわね。私もクス男とやり取りしていた時、怪しげな暗号通貨を勧められたわ・・・。そんなことを言い出すようになったから、クス男を胡散臭く思い始めたのよね・・・」
「そうなのですね。利恵子はクス男の口車に乗せられて、300万円を預けてしまいます。その後、クス男と連絡が取れなくなって、利恵子は再び騙されたことに気づきます」
「二度もお金をだまし取られるなんて!」
「男に免疫がなかったのでしょう。そして、婚活アプリを紹介していた莉多子さんを一方的に恨むようになってしまったのです」
「私は婚活アプリにはヤバい男もいるから、見極める力が必要だと散々注意喚起していたつもりだったのに・・・。利恵子さんみたいな箱入り娘は、そもそもアプリではなく結婚相談所が合っているのよ。最初から私のところに相談に来てもらえれば、ベストな婚活法を提案できたのに悔しいわ!」
「利恵子にはハブ、クス男、そして莉多子さんに恨みを抱いていました。それで、莉多子さんのメールに山小屋レンタルのDMを送って、上手く誘い出したのです」
「利恵子さんの動機はよくわかったわ。でも、巻き込まれたわかたか姉妹が可哀想だわ」
「実は、利恵子さんはもう一人恨んでいた人物がいたようです」
「えっ?」
「捜査の結果、利恵子は和歌子さんと同じ大学に通っていて、同じアニメ研究会というサークルに属していたことがわかりました」
