結婚相談所から申し込んだ11才歳上力石徹に似た方とは既に交際終了とされたが、本日は日帰り旅行に熱海におる。
古く小さな温泉所には辿りついた物の、結局入りたくないと力石が言うから、
また坂道を下るようにして2人ブラブラと歩き出す。
眼下程良い距離に白く大きな建物が見え、
あのホテルの温泉に行ってみようと力石が言うから、
もう好きにしてくれと思いついて行く。
あんなホテルでは、日帰り用の家族風呂は恐らく無いから、2人で一緒に入れないなと、ガッカリする。
誘われると困る割には、誘われないと寂しいのは何故であろう。
近付くとホテルは古かった。
中に入るとまるで昭和で、昔のホテルオークラのようである。赤い絨毯にオレンジのライトで、ほんのりとカビ臭く、宿泊客の年齢層はかなり高めで、バスを待つロビーは混雑しており、あちらこちらで元気な笑い声が聞こえる。
ホテル内を2人でウロウロして、6階に温泉の文字がある事を認めるとエレベーターに乗り込む。
私はふと気付き、風呂に入るには金を払うのではないか、と、力石に言うと、彼は、
まあ怒られたら払いましょう。と笑うからセコい、
この男、確信犯で解っていてエレベーターに乗ったのだ。
6階に到着して、男女別々の暖簾に別れる前に、自宅から持ってきた手ぬぐいと歯ブラシを力石に渡す。
力石がありがとうと言うから、そんな気の利く自分に酔う。
脱衣場に入ると掃除姿の老婆とすれ違ってドキドキする。
考えてみたらホテルの温泉だ、通常の客は浴衣姿で入るであろうに、私とらきたらお洒落服にお洒落バッグを持参しておるから、これで温泉とはどう考えてもおかしい。
とにかく、
目立たぬ位置の籠に服を入れて温泉に入る。
幸い変な時間帯であるから人もおらぬ。
温泉からは熱海の海が一望できて、
私は大空に向かって大きく伸びをする。