結婚相談所から申し込まれた7才歳上、
坂東忠信に似た会社員の方と逗子葉山でまだデート中であり、夜は力石と会う予定。
マーロウのプリンとコーヒーの箱を抱えて車に戻る。
物語であれば、
なんか相手が嫌なので以上終了。
と出来るが、実際は帰宅するまでじっと忍耐が必要とされる。
よしこれを食したら今日の任務は完了だ、
と己を奮い立たせる。
デートは終盤、ゴールは近い。
すると坂東忠信はのんびりした口調で、
折角ですから、景色の良い場所まで行って食べませんか。
と申してくるが、私は、
ここでも良かろうとにべも無く返す。
※言うておくが左だ。似ておるばかりに坂東忠信と書いてすまぬと思う。
しかしここは店の横の駐車場、
見渡す限りの灰色、永遠にさまようコンクリートジャングル。そして車内は足下に泥。
致し方無く、
良い考えだな移動しようかと私が言うと、
坂東忠信は車のエンジンをかける。
プリンの箱を持つのは私。コーヒーが2つ。
実はドリフのコントを期待されておるのかと、一瞬思う。
バナナの皮が落ちていたら、滑って転ばなければいけないように、坂東忠信のつんのめるブレーキで、この熱いコーヒーをそのままこの男にぶっかけるべきなのか。
海沿いの道路を真っ直ぐ進むと、赤く燃えゆく太陽が眩しい。葉山の夕日はなんと美しい。

坂東忠信は、海沿いのカーブに差し掛かる場所などで、
ここで止めようかな、ここにしようかな、
と呟いた後で、
でもここだと怒られるかな、とか言うておる。
私は、早くしないと力石との待ち合わせに遅れないかという焦りがある。
正直、場所なんかどこだって良い。
彼はゆっくり走りながらも、
ここにするか、止めるよ、止める、でもやっぱりここは怒られるかな。を繰り返す。
早くしろ、何時までお前のオナニーに付き合わせるつもりなのか、と私はイライラしてきて、
向こうに見える駐車場を指し、
あの辺で良いだろう、良い眺めでは無いか。
と、適当な事を言う。
坂東忠信はそうですね、
と言いながら駐車場に向かうが、
看板に大きく、駐車料金300円の文字を見て、
高いなと呟く。
私は、絶対に、意地でも、
今回は財布は出さないぞと、
心に誓う。
