後輩に紹介された広告マンと焼き鳥屋の個室で会った。彼は寡黙だが話す声は低くそこに居るだけで何だか熱量を感じる。だが、端正な顔は笑うと随分あどけない。


今は湾岸沿いのタワマンに住んでいるというから地方出身であろうと思い聞くと中部地方に実家があると言う。

どんな様子であったのかを問うと、何も無い田舎だし実家では兄の方が可愛がられているからもう随分帰っていないのだという。


私は元来お節介であるから、

末の子を可愛いと思わない親はいない堂々と帰ると良い。というような事を話すと、

そうですかねと彼は黙る。

LINEではペラペラ話すが対面では深く思った事をあまり口にしない様子だ。



最近頭に来た事は何かあるかと彼に問われたので、

恵比寿に住んでいると人に話した時に、恵比寿でも山手線の内側か外側かと聞く者がおり、その聞いてきた当人は千葉県に住んでいるというからなんだか憤慨したと私が申すと広告マンは、怒るポイントがいまいち解らないがそういうものなのかと、会話は今ひとつ噛み合わない。


『しかもその者は千葉県に住んでる上にるるぶを図書館で借りるのだ』と小ネタを追加したのだが、まあそういう人も居るであろう、句点。と言った具合だ。ではお主が頭に来た事は何かあるかと逆に私が問うと彼は頭を捻らせながら、最近は特に無いとにべも無く言う。



しばらくすると彼は好きな漫画のイベントに行った時の写真を携帯から出してきた。

物凄く大勢の集合写真で彼は豆粒程の大きさであるが満面の笑みである事は一目で解る。

果たして私が直接この笑顔を見れる日は来るのであろうか。



店を出ると外は暗く雨は小降りになっていた。



広告マンはこの程度であればと傘をささない。

私がさした傘の中半分に彼を入れると、彼は一瞬驚いたが

それじゃあと言いながら左手で

私の長い髪にそっと触れた上で腰のクビレに手を廻してくる、まったくもって侮れない。