○山○美は地球での人生が

終わったばかりだった。



「ああ。なんということのない人生だった。

親からも愛されなかったし、

特に誰も愛することはなかった。」

そう思いながら光に吸い込まれる。

なんて気持ちがいいのだろう。

まばゆいばかりの光。

自分はここにふさわしくないのじゃないか。




ごおっと何かに吸い込まれ、

気がつくと目の前にまぶしい光の塊がいる。




言葉ではなく

温かい愛情のかたまりのような

波動の波の中にいるような感じで

○美は圧倒される。




その存在は見えないが、

微笑んでいるようだった。

そして言葉ではなく

思念でコミュニケーションを

取ってくる。



優しい抱擁のような光に

○美はうっとりして泣いていた。

こんな風に愛されたのは

どのくらいぶりだろう。

地球ではまったくなかったかもしれない。

特に母親からは。

肉体はもうないというのに、

心の中で○美は泣いていた。





光の存在はすべてわかっているようだった。

何も言わず、

ただそこにいて温かい光を送って

くれるのはありがたかった。




○美は

「母親に、愛されたかった」

とその存在に告げた。



すると一瞬で

地球での人生のすべての

ひとコマひとコマが

同時に現れた。





母親は1人で私を育て

怒ってばかりだった。

寂しくてもおなかがすいても

母には言えなかった。

物心ついた時から

家事をやるのはあたりまえだったが

友人の家に遊びに行った時に

友人は家事など一切やっていなかった。

その子の家ではお母さんがやさしくて

お茶とおやつを出してくれたのが

衝撃的だった。

自分の家庭が普通ではないと

知ってショックだったが

母には言えなかった。





私の人生は

母親にずっと認めてほしいまま

終わってしまった、と思った。






するとその瞬間

人生のひとコマひとコマの

母親の感情が自分を

「占領」した。

子供に八つ当たりするしか

方法がないほど

彼女は怒っていた。

「誰も私を認めてくれない」

「誰も私を愛してくれない」

「私なんてどうせ」

「あんたに何がわかるのよ」






ああ

お母さん

と○美はつぶやいた。

私は母と同じ気持ちを味わって

人生を終えたのだ。






「なんでこの魂を母親として

選んだか、思い出そうか」

と、光の存在は今度は

明瞭な言葉で話しかけてきた。



その瞬間、

しゅうっと○美は空間に飲み込まれ

光がたくさん集まっている部屋にいた。





そしてその中に

地球に生まれる前の

自分の魂を見つけた。

柔らかい色を発しながら

キラキラと輝く魂は

喜びに満ちていた。

そばにはやはり光の存在がいて

会話をしている。







「私は女の子として

あの人の子供になることを決めたの」






光の存在は微笑みながら

「しかし彼女は大変なカルマを

背負っていて承認欲求という

欲のカバンを持っている。

君を子供として愛することは難しいよ」

と○美に話しかけている。

「そうかもしれないけど

助けてあげたいの。

だって彼女はいつもだまされてばかりいて

誰もそばに味方がいないわ。」



光の存在はやはり微笑みながら

「あなたが彼女の元に降りていくと

同じ欲のカバンを持つことになるよ。

それでもいいんだね?」

と○美に尋ねる。

しかし○美の魂は堂々と答える。

「そうしたら彼女のカバンが軽くなるし、

私ならそのカバンを捨てることを

手伝えるはずだわ。」



そうか、わかった、と光の存在は

○美の魂を抱きしめる。

あなたはそのことを忘れることに

なっているけれども

いつでも、見守っているよ

と言いながら。






その一連の情景を思い出した

まだ地球上に意識の残っている

○美の魂は呆然としていた。




「私が、選んだのか。。。」

黙ってそうだという風に

その光の存在の光が強くなった。

そして男性的でも女性的でもある

その存在は言った。

「これでお母さんに認めてほしい、

というあなたの承認欲求の理由が

わかりましたね?

あなたのものではないのです。

今、ここでそのカバンを捨てましょうか。」





すると不思議なことに

○美の心―今となっては

存在全部が心のようだが―

はぶるん、と揺れた。




このカバンを手放す?

たしかに重いし不自由だし

このカバンが無かったら

どこまでも飛んでいけるのがわかる。

でも―ずっと持っていた

母の一部だったカバンだ。

母から受けとったカバンを

どうして捨てられる?




そのカバンを持ったままだと

また地球の重力に

引っ張られますよ、

とやさしく、しかし強く

光の存在が言う。



欲という想念は

満たされるまで

地球の磁場にとどまります。

今なら間に合いますが、

地球に戻りますか?





同時にたくさんの

地球で体験した情景が

○美を飲み込む。

このカバンがそれを引き寄せて

いることもわかっている。

でも。




「そのお母さんは人を愛する

器がなかったことを知っていながら

あなたは子供になったのですよ。

そのカバンの重さをを減らすために。」



○美ははっきりとわかっていた。

この「母親に愛されたい」

という想いを持ち続けていると

この光の世界にとどまれない

ということを。

その存在の言うことは

完璧に理解していた。

しかしカバンを手放すことに

抵抗があるのだった。

そのカバンが重ければ重いほど

じりじりと地球の重力場に

近づいていくのもわかった。





光の存在は

気がつくとものすごい

大きさになっていて

あなたの思いがすべてを決めるのは

わかっていますね、

と言って無限に拡大していき

○美はその中で気を失った。











そして気がつくと

身体が重かった。

しかも、うまく動けない。

何?何なの?

あの気持ちのいい場所

ではなく、

私はまた地球に引っ張られたの?










「はあい~○太くん、

おっぱいでちゅか~?

よく泣く子ね!」

と女性が上から覗きこんでいる―







○美は男の子になって

今度は過保護な束縛の激しい

家庭の子供になった。


















軽くなることも

重くなることも

魂の選択、

という小話でした。

あなたならどちらを

選びますか?