「私たちは今まさに『美』を観ているのよ」
バレエダンサーのシルヴィ・ギエムは
隣に座っていた姪っ子に向かってこう呟いたという。
この言葉の意味が
本当に本当に実感としてよくわかる。
坂東玉三郎の「鷺娘」です。
そりゃあ、舞台で
生でみた方がいいに決まってるのだろうけれど
私は映画で〈観劇〉しました。
最初に白無垢で登場した時から
もう心を持っていかれました。
衣装の端から端までが
自分の体だとでもいうように
お引きずりの着物の裾までが計算され尽くしたような美しさなのです。
もっと言えば背景やお囃子も含めた
すべての一瞬一瞬が
『美』であることを突き詰めたような作品です。
白無垢から瞬時に真紅の衣装に早変わりする時も
徐々に激しさを増す雪と共に
狂おしく命を焼き尽くす刹那も
『美』の中で滝が刻まれていくようです。
ため息しか出ない。。。。
今回の映画はニ本の作品で上映されました。
鷺娘の前に観たのは
「日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)」
という演目です。
恋い慕う許嫁(だと思っている)殿方に会うために、川の向こう岸に渡りたいと願う清姫の願いを、船頭が非情なまでに断り続けます。
どうしても渡し船を出してもらえない清姫は情念を燃やし続け、その姿を蛇に変えて川を泳ぎきるというのがこの演目のストーリーです。
舞台は川べりだけ。
あとでこの演目の内容を調べてみましたら、姫が一目惚れしたのは親王(安珍という名に変えて世を忍んでいます)なのですが、彼にはもともと許嫁がいたのです。清姫は父親のその場凌ぎの一言を間に受けて、姫は自分の恋人だと思い込んでしまったのでした。
そんな姫に追いかけて来られてはかなわないとばかりに、安珍は船頭にお金を渡して姫が川を渡らないようにと算段するのです。
こんなにも恋焦がれているのに
なぜ彼の元へ行くことができないのか。
姫は情念を燃やし
鬼となり
蛇に身をやつすのです。
この演目は人形浄瑠璃で演じられることが多いです。姫の顔が瞬時に鬼の形相になるという場面はこの演目の見どころのひとつだそうです。
これを坂東玉三郎と市川九團次が人形振りで演じます。
人形振りというのは、あたかも人形が動いているかのように演じるというもの。
で、九團次の船頭!
これがもう、人形にしかみえないんです‼︎
私、最後までヒトなの?人形なの?ってわからなかったですもん![]()
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そしてこの時の玉三郎が
やはりとんでもなく美しい。
玉三郎が身につける衣装と鬢は
毎回、数十キロもするそうです。
とてつもなく重いものを身にまとって演じているわけですね。
蛇に化身した姫が川を渡る場面は圧巻です。
泳いでいる途中で少しずつ衣装が変わって
時折、鱗のような衣装が見え隠れする。
〈川を渡る〉ということが
〈鬼になり蛇になる〉
という彼岸に向かっていく過程なわけです。
すごいよ、泣けたもの〜〜![]()
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この場面はせつなく、そして素晴らしい〜〜![]()
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お囃子も盛り立てている〜〜![]()
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奇しくも、坂東玉三郎が
これからは大舞台から身を引くという報道が出たばかり。
DVDを、買おうかな?と検討中です。
生の玉三郎も、どこかでみたいなぁ。

