中国人たちの略奪、ロシア兵たちの暴行や強姦の場面を見て、胸がギューッと締め付けられた。
それは、単に酷い場面だからというだけじゃない。
現実の話を聞いたことがあったから。
もう20年近く前。
勤めていた会社の社員旅行の時だったと思う。
宴会場でたまたま隣にいたのは、定年間近のTさん。
いつも穏やか、と言えば聞こえはいいけど、怒るべき場面でもちょっとヘラヘラした感じが、イマイチ好きになれないオジさんだった。
2人で何か喋っていた時、急にTさんが、
「僕は外国人はキライだ」(のようなこと)と、
遠くを見ながらこれまで見たことないような怖い顔と強い口調だったことに、私はドキッとした。
恐る恐る理由を尋ねると、Tさんの子どもの時の話になった。
Tさんは、家族で満州に暮らしていたのだという。お父さんは警察官だったそう。
満州・・・なんだか遠い遠い、別の世界の話のよう。
日本が戦争に負けて、ロシア兵たちが満州にやって来た。
彼らは、満州の治安を維持するために来ている、、、はずだった。
でも、実際は酷いもので、ドラマの場面そのもの。 そして、日本の軍人、警察などの公務員は、次々に捕まるか、酷い時には殺された。。
そう、Tさんのお父さんは警察官。
なんと、幼いTさんの目の前で、お父さんが殺されたのだそう。。。。
これまで会社の誰にも話したことはないとも。
淡々と話すTさんの隣で、私は頭が真っ白になった。宴会場のざわめきが一気に遠のいて、向こうで騒いでいる同僚たちの声が聞こえなくなった。
Tさんの中に、こんなにも悲惨な体験が隠されていたのかという驚き。
ヘラヘラとしているように見えたのは、もう怒りの沸点が振り切れていて、逆に心が動かなくなっていたのか。
人間はなんと様々なものを抱えて生きているのだろう。深い深いその人の本心は、傍から見ただけでは分からない。
次の日から、Tさんに対する私の見る目が変わったのは言うまでもない。
そして、戦争は遠い話じゃないってことも。まだまだTさんみたいな人は、たくさん生きているはず。
余談だけど念のため。
冒頭に書いた、戦後の中国人の略奪は、残念だけれど責められない。だって、満州という国は、日本が中国人から略奪したものなのだから。
日本人として、こういう話も知っておかなければと思う。
