4年生になって
シゲ君の体の成長はめざましい。
身長も去年と比べると
本当に伸びた。
多分トレーニングの成果で
姿勢が良くなった事も
伸びた一因かもしれない。
ただ
伸びてきた故に
ついていっていない部分もある。
整体の先生が
シゲ君のトレーニングに行く道すがら
こうおっしゃった。
「どうも彼の右足が気になる。
長さが違ってきている・・・」
シゲ君は左足はしっかり筋肉がついているが
右足が弱い。
なので、階段を降りる時
右足で踏ん張る時間が短くて、
すぐに左足が下りてしまう。
リズム良く階段を降りることが出来ない。
歩くリズムもやはり右足で
踏ん張る時間が短い。
そうすると、
右足の筋肉が使われず締まらないので
長くなってしまうのだ。
シゲ君の家で
壁に手をついて片足立ちをしてもらった。
左足はシゲ君自身も安心しているので、
すぐに立てたし、長い時間でも大丈夫だ。
それに引き換え。
右足は同じシゲ君とは思えないほど
全然踏ん張れない。
文字通り「腰砕け」状態だ。
一瞬も立てない。
余りの違いに軽いショックを覚えながら、
いつものトレーニング場所である
「サティ」に向かう。
車中での先生とワタシの会話。
「右足中心でトレーニングした方がいいんでしょうか?」
「いや、あまりそこに重点を置くとバランスが悪くなるから様子を見ながらな」
トレーニングの途中。
先生が一服している間、
シゲ君の背中や頭の汗を拭いながら
ワタシはこう話した。
「シゲ君。
シゲ君はこれから6年生になり、
中学生になり、
いつまでもお母さんや先生に頼ってばかりもいられないよ。
友達と一緒に遊びにも行きたいでしょ?
野球もしたいでしょ?
キャンプにも行ってみたいでしょ?
だったら自分一人でもしっかり歩けるように
もっともっと頑張ろう!」
休憩が終わり、
階段を下るトレーニングが始まると、
シゲ君は右足から降り始めた。
それも一段ずつ
右足ばかりで降り始めた。
2回ほど
6階建てのサティを往復した後、
階段のてすりにつかまって
片足立ちした。
右足で片足立ちが出来た!
それもしっかりと。
この日のシゲ君には
二回も涙が出そうになった。
一回目は
自分で右足から降り始めた時。
二回目は
勿論、右足でしっかり立てた時。
彼自身もものすごく嬉しかったに違いない。
帰ってからシゲ君のお母さんの前でも
片足立ち。
帰ってからの方が
しっかりと長い時間、右足で立つことが出来た。
お母さんも
別人のような変貌ぶりに
喜びを通り越して、
驚くばかり。
シゲ君は決して
機能が麻痺しているのではない。
使い方を知らないだけなのだ。
例え歩き方がちょっと違っても
それは
足を前に出す。
足を上に上げる。
その方法を知らないだけなのだ。
例え話すのが出来なくても
それは発声方法を知らないだけで、
人が話している事。
自分に伝えたいことは理解出来る。
ワタシは決して右足を鍛えようねとは言わなかった。
でも
彼は自分が今何をすべきかを
すぐに理解し
すぐに行動した。
シゲ君は伝える手段が困難でも、
理解して、それを体で表現できる。
「一を聞いて十を知る」
今、大人でもこれを出来る人が少ないかもしれない。
これは空気を読めないと出来ないからだ。
シゲ君は本当に賢い子供です。