高校生の頃、年に1回、学校が有名人を招いて、講演会を開いていました。
たしか、高校1年の時が数学者の秋山仁さんで、高校2年が登山家の野口健さん、高校3年はジャーナリストの田原総一朗さんでした。
秋山さんや田原さんの講演もおもしろかったですが、野口健さんの講演で忘れられないエピソードを一つご紹介します。
登山家をしていると、遭難や滑落がつきものだそうです。
中には命を落とす仲間もいるようです。
何度も仲間を失ったと聞きました。
仲間だけでなく、見知らぬ登山者が命を落とす場面にも遭遇するそうです。
私が今でも覚えている話は、山岳部に所属していた男子大学生が亡くなった話です。
その大学生と野口さんが知り合いだったかどうかは覚えていません。
その彼は、険しい山に挑戦している最中、滑落して亡くなったようです。
不運の事故によるものです。
幸い、遺体は発見されたようですが、すぐには見つからなかったこともあって、腐敗が進んでいました。
さらに滑落事故だったため、損壊も激しかったそうです。
うじも湧いていました。
どういう経緯かは忘れましたが、野口さんは、大学生の遺族が遺体と面会する場面に立ち会ったと言っていました。
野口さんは驚いたそうです。
面会時、母親が息子の遺体に向き合ったとき、なんのためらいもなく、息子さんの遺体を力強く抱きしめたのです。
野口さんは、その抱きしめる光景が忘れられないと語っていました。
生きているときと変わらないように、いやむしろ、それ以上に強く抱きしめているように見えたのです。
母親と一緒に父親も来ていたらしいのですが、父親は結局、最後まで息子さんに触れることはなかったそうです。
母親の力強さを再認識した瞬間でした。
