『亜美ちゃん、一緒に死のう?』
拓磨さんを見ていたあたしの前にさえぎるようにひかりが立った。
頭から血を流していない、制服姿のごく普通のひかりだ。
「ひかり……」
『ひとりは寂しいの』
悲しそうな瞳を向けるひかりに胸が痛む。
「亜美ちゃん! ブレスレットを捨てて、こっちへ来るんだ! 話をしてはいけない!」
再び拓磨さんの声が聞こえてきた。
拓磨さんはあたしに手が届きそうなところまでが限界で、立ちすくんでいる。
『亜美ちゃんは優しいから……あたしをいつも裏切らなかった』
「ひかり……わかってあげられなくてごめんね」
ひかりに一緒に死のうと言われてから、あたしはそれもいいかも。と、そんな気になり始めていた。
『ここは……暗くて……冷たくて……嫌なところなの。亜美ちゃん、助けて?』
「話をしてはいけない!」
拓磨さんが叫ぶ。
玲奈から神社で唱えたお経のようなものが聞こえる。
ひかりの顔が歪む。
「……いいよ」
あたしは心からそう思って言っていた。
その瞬間、ぎゅっと握っていたブレスレットがあたしの手から離れて宙に浮く。
「ありがとう……亜美ちゃん」
ひかりの姿がしだいに見えなくなっていく。
「ひかりっ!?」
ブレスレットはあたしの目の前で、分裂し海へ落ちて行く。
「ひかり! どこにいるのっ!?」
あたしはひかりの姿を探した。
いないの……?
脚の力が抜けて、地面にへなへなと座り込んだところへ、拓磨さんが膝をついてあたしの肩を軽く触れる。
「彼女は君のおかげで成仏したようだよ」
「成仏……?」
「君の彼女を想う真の心が、元の彼女に戻したんだ」
ひかりがこの世にいない。もうあたしの前に、どんな姿でも現れない。
そう考えると、涙がとめどなく流れてきてその場で泣いていた。
「ごめんね。ひか……りっ……わかってあげられなくて……ごめんね……ううっ……うっ……」
あたしが覚えているのはそこまでだった。