「玲奈のおかげだね」
「小さい頃に教わっていたお経を唱えてみたんだけど」
「田島先輩、大丈夫ですか?」
玲奈は膝をついて、田島先輩の様子を伺う。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
突然、田島先輩は泣きじゃくり謝り始めた。
「なにを謝るんですか?」
あたしは聞いてみる。
「あたしたちはあの子を殺したも同然なのよー!」
「どういう意味なんですかっ!?」
あたしは田島先輩に詰め寄る。
泣きじゃくっていた田島先輩は突然ぐらりと身体を揺らし地面に倒れた。
「田島先輩っ! 先輩っ!」
身体を揺さぶって見ても、反応がない。
「亜美、俺が背負う」
翔平が田島先輩を背負ってくれる。
彼氏の小杉はぶるぶる震えて、ようやくひとりで歩ける状態。
あたしたちは急いで合宿所に向かった。
『あたしたちはあの子を殺したも同然なのよー!』
田島先輩の言葉が耳から離れない。
どういう意味なの?
何度も翔平の背中の田島先輩を見てしまう。
小杉は肩を落とし、俯きがちに歩いている。
「ちゃんと話を聞かなきゃね。なんかあるんだよ」
隣を歩く玲奈があたしに言った。
「うん」
戻る途中、合宿所が見えてきたところで、田島先輩は翔平の背中で意識を取り戻した。
合宿所の門で待っていてくれたのは、テニス部の係りの4人と顧問2人だ。
田島先輩は翔平の背中から降りた。
「遅かったな。なにをしていたんだ? これから行こうと思っていたんだぞ」
「すみません。田島先輩の具合が悪くなって」
玲奈が先生に説明する。
「田島、どうした? 大丈夫か?」
サッカー部の顧問が田島先輩に近づくと聞く。
「は……い。もう大丈夫です」
「そうか。早く寝なさい。明日も忙しいぞ。お前たちも」
「はい」
翔平がみんなを代表して返事をしてくれる。
待ちくたびれたみのりは少しムッとした表情だ。
「みのり、ごめんね。田島先輩の具合が悪くなっちゃって」
「ううん。なにかあったのかと心配しちゃった。部屋に戻ろう?」
みのりの表情が和らいだ。
「あ、ごめん。先に行っててくれる? ちょっと翔平に話があって。すぐに行くから」
「まーったく、今まで一緒にいたのにまだ話しがあるんだ? うん、いいよ。先に行ってる」
みのりは意味深なウインクをあたしにして、部員たちと去っていく。
まだ話は終わっていない。
田島先輩の身体は心配だけれど、あの言葉の意味を教えてもらわなければ。
「田島先輩、談話室に行きましょう」
