「翔平、大丈夫? ごめんね。こんなこと言っちゃって……」
「いや、俺がいつでも話してって言ったんだから。そんなことが本当に起こるなんてまだ信じられないな。でも、実際に人が死んでるし……」
翔平の頭が混乱しているみたい。
「だから、翔平も気をつけてね?」
「ああ。でも気をつけろって言ってもなぁ。それだけの力があるんだから、いざとなったらなにも出来そうにないな」
「そうなんだけどね……とりあえず、玲奈のお兄さんの連絡を待ってるの。力のある霊能者に聞いてくれるって言っていたから」
話しで時間がかなり経ってしまった。
「戻ろう?」
そう言った時、合宿所からみのりが出てくるのが見えた。
「亜美!」
手を振りながらみのりが駆け寄ってくるのが見えて、あたしたちも歩き出した。
「おそっーい! 何してたのよー」
「ごめんね。道にけっこう大きな石があったから、それを取り除いていたら時間が経っちゃってたみたい」
ちょっと苦し紛れの言い訳。
「なんだー 誰もいないからって、イチャついているのかと思ったよ」
「イチャ……」
そう言えば、そんな雰囲気なんて少しもなかったな。
みのりの勘ぐりにあたしは苦笑いを浮かべる。
「早く食堂へ行こうよ」
あたしたちはそのまま食堂へ向かった。
夕食後、広い談話室に皆は移動する。
そこで、灯りを消し一本の太いロウソクだけ点けた状態で、某タレントの怖い話を流すのだ。
その後、これから行く神社の怖い噂(これは作り話)を肝試し担当の男子がこわーく話すのだ。
夕食を食べていても翔平が気になった。
ひかりのこと、話してしまっても良かったのだろうか。
少し離れた場所に男子部員たちと座り、楽しそうに話しをしながら食べている翔平を見て少しホッとする。
「亜美、翔平と神社の時なんかあった?」
そこへみのりが鋭く突いてくる。
「えっ?」
「だって、さっきから翔平ばかり見ているから」
「な、なにもないよ」
「本当に? それならがっかり。キスでもしたかと思ったんだけどな」
「みのりっ!」
周りにいた女子部員が興味津々に話しに加わってくるから、あたしは否定するのに必死。
手を振りで否定するあたしは不意に寒気を感じる。
足元からゾクゾクとした寒気が上に上がってくる感覚。
『シアワセ……デ……ウラヤマシイ……』
耳元でひかりの恨めしそうな声が聞こえて身体が跳ねると共に、手に持っていた箸を落としてしまう。
箸を拾わず、辺りを見回すけれどひかりの姿は見えない。
ひかりを探す瞳が、玲奈が少し離れた席から立ち、あたしの瞳とぶつかる。
声を出さすに「大丈夫?」と言っているようだ。
コクリ、玲奈に向かって頷くと、ストンとイスに座る。
「亜美、どうしたの? 大丈夫? お箸、もらってこようか?」
みのりが箸を拾ってくれたようだ。
「あ、ごめん。大丈夫。スプーンがあるから」
ほとんど食べ終わっているから、わざわざ箸を取りに行く必要はない。
「変な亜美」
みのりは肩をすくめると、両手を合わせてごちそうさまをした。
今、近くにひかりがいた。姿は見えないけれど『シアワセ……デ……ウラヤマシイ……』とはっきり耳元で聞こえた。
その言葉が耳について離れない。
食欲はなくなり、残っているスープを一口飲むとトレーを戻しに立った。
