振り返ってみると「よく1年間頑張った」と誇りをもっていえる。
今だから告白するが、
1年前、自分があまりに自己中心的で、思いやりがなく、妻に三行半を突きつけられた。
私の妻は、16歳の時から朝・昼・晩3つの仕事を掛け持ちし、どの業界でもすぐにトップに登りつめるが、その当時女性で出世するのは限界があった。そこで、そこまでいくと3つの仕事を同時に辞め、また別の3つの仕事を始めるということをやったそうだ。
当時としては珍しかった女性バーテンダーの走りとして、話題になったり、トップセールスレディとして、給料袋がタテにたつほどの報酬をもらったり、宝石のデザイナーとして活躍したり…。乗馬倶楽部を経営する傍ら、ヒーリングをしたり、経営コンサルティングをしたり…。
彼女の体験談を聞いていると、「この人いったい何歳なんだろう、300年位生きているんじゃないか…?」と疑うほど、密度の濃い人生を生きている人だった。
それまでの自分にとっては、絶対に出会うはずのないような世界に住んでいた彼女だが、ひょんなことから、知人を介して、個人セッションの依頼を受け、1週間泊り込みでの集中セッションをすることになった。
当時、セラピストとして東京の恵比寿で大々的にトレーニング・コースや個人セッションをしていたが、それが少しうまくいかなくなり始めた頃で、どう打破したらいいか模索中だった。そんな時に、すごい経歴を持つ彼女のセッションができることになり、「これは、自分の人生を変えるきっかけになるぞ!」と直感的に思った。
彼女は普通の人と違って、ほんの少しの気づきから、もの凄く大きな変化を起こせる人だった。
それは、彼女の力なのだが、「俺もまんざらではないな」と勘違いし、俄然自信を取り戻した私は、彼女と組んで一緒に仕事をはじめ、それまで「私は絶対に結婚しない」と周りに豪語していた彼女と奇跡的に結婚した。
ところが、それからが大変だった。
彼女は全て自分自身の体験を通して獲得したものを通してクライアントに関わっている。私も同じようなことを言うのだが、全てセミナー等を通して学んできたことの受け売りであって、一緒に居れば居るほど、自分の薄っぺらさに直面した。
また、彼女は常に本質的な関わりを追求する人で、私の表面的なごまかしや、取り繕いは決して許さなかった。
私が、セミナーの講師として前に立っている時でも、何かズレているところがあれば、容赦なく「それは違う!」と言った。
私は、それを素直に受け止められず、取り繕いようがなくて困ってしまい赤面するばかりだった。
プライベートでは、とても甘え上手だし、料理も上手で、キレイ好きで、女性としても人間としても申し分ない人だった。
彼女の信条の『必要なときに必要な 人・物・金・情報 が必要なだけ在る』という言葉の通り、大邸宅に住み、年に何回もリゾートや、高級旅館に泊まっての旅行をしたり…と、今までの人生で体験したことのないようなリッチな生活もさせてもらった。
そんな申し分のない生活をしながら、私の内側では、常に彼女と自分を比較し、自分の至らなさに直面し、
「このままではいつか捨てられるのではないか…」
という恐れが膨らんでいった。
限りなく豊かな生活をしていながらも、
「それは彼女の力によるものであり、自分の実力で得たものではない…」
と思うと、心の底からその豊かさを享受し、喜ぶことができない、感謝知らずの自分にもイヤになった。
彼女は、愛をもって、あらゆる形で私に接してくれたが、
「何とか相応しくならなければ!」
ともがいている自分は、結果的に
『俺だってこんなことができるんだぞ!』
と張り合うだけで、それは不調和しか生むことはなかった。しかし、どうしていいのか分からなかった。
彼女は万能で、何でも一人でできるし、ものすごい強い意志を持ち、決して弱音を吐かない人なので、彼女といると、完全に「お母さんと子供」になってしまい、自分のことで精一杯で、対等のパートナーとしての役割を完全に放棄していた。
普段気丈な彼女でも、調子が悪いときには、気弱にもなるし、夫からのやさしさや思いやりを求める一人の女性であることに想いがいたらなかったのだ。
それでも彼女は辛抱強く7年間一緒に生活をしたが、もうこれ以上は手に負えないと感じて、別れることになった。
ある先生に相談したら、
「セミナーの講師やセラピストは沢山居るけれど、必ず二つのタイプに分かれる。
それは、『自分の体験を通して得たものを伝える人』と、『そういう人から学んだ知識を伝える人』
後者の人は必ずあなたのように行き詰まるんだ。
一度、全部を捨てたらいいね。なるべく、どん底から始めた方がいい。
45歳なら今が最後のチャンスだね。50歳になったら、『もう歳なんだから、可哀想だし、今更言ってもどうせ変わらないから…』と誰も何も言ってくれなくなる。今ならバカにし、怒ってもらえる。それが目的なんだから、ありがたいね。」
《つづく》
《人生を変える旅路⑦ 卒業と旅立ち》
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