最後に会った時は

 

2人でぼんやりと海を眺めた

 

 

ぽつぽつと話しながら波の音を聞いた

 

 

 

駅から歩ける距離にある海だったけど

 

彼女を歩かせるのには不安がよぎった

 

 

 

・・・でも

もし具合が悪くなったら私がタクシー呼べばいいし

 

緊急だったら救急車呼べばいいし

 

私がなんとかすればいいんだから

 

 

「みきちゃんと海に行くのだ」と彼女が望んでいるのだから

 

海に行こうと思って

 

2人でゆっくり歩いた

 

 

○○○

 

 

11月は彼女のお誕生日だったから

プレゼントを用意していたのだけど

直前まで迷っていた

 

 

食べ物は、何が大丈夫だろうか

 

装身具は、何が大丈夫だろうか

 

「大丈夫そう」を探していてなかなか決まらなかった

 

 

 

マニキュアとかだと、いつもと違う感じで、いま自分では買わなそうかな

 

と思いながらお店に向かっていたとき

 

 

通りがかりの帽子屋さんに

ふわふわの帽子があって

 

「かわいいラブラブ似合いそう照れ」と思ったから

急にそれに決めた

 

 

 

そして当日キミに会った時

 

マニキュアではダメだったことに気づき

 

ちょっとホッとしたよ

 

 

 

一緒にご飯を食べた時に見せて

 

とっても喜んでくれて

 

でも帽子の紙袋は意外と大きくて

 

彼女の手が辛そうだったから私が持って歩いた

 

 

 

 

帰りも駅まで送ってくれて

 

バイバイと言って改札を通ったんだけど

 

帽子の袋を持ったままだった事に気づき

 

慌てて戻った

 

 

 

やだーもう

2人とも気づかなかったねー

と笑いながら

 

袋を渡しながら

彼女の手に触れた

 

 

 

 

それが今生の別れ

 

 

 

 

もし

マニキュアだったら

包みが小さくて

すぐに自分の鞄にしまっていたかもしれないね

 

 

触っておけって

神様の粋な計らいだったのかしら

 

 

○○○

 

 

また11月がきた

 

 

今年は彼女が好きそうな香りを選んだぞ

 

薄墨で熨斗を書いてもらいながら

 

本当に、もう、いないんだなぁと思った

 

 

 

夏にお花を贈った時は

あんなに喜んでくれたのに

 

 

いなくなってしまった

 

 

 

 

コロナのせいで

 

お別れにも行けなかったし

 

 

 

私の昨日と今日と明日はあんまり変わらないように見えるのに

 

キミは泡のように消えてしまった

 

 

 

旦那様がお手紙をくださって

 

「愛してくださってありがとうございました」って

 

書いてくれていたけど

 

 

より愛されていたのは私の方だ

 

 

彼女は私をとても大切にしてくれました

 

 

○○○

 

 

帰る直前に

どうしても

私もみきちゃんに何かあげるんだと言って

 

ほぼ強制的にチュープレゼントしてくれた一輪挿し

 

形見になっちゃったじゃんかよー

 

一生大切にするぜ

 

 

ありがとう

 

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