第2話・前編

裏切りの火曜日。仕事帰りの夫が向かった場所


あの地獄のような裏アカウントと、夫のスマホに届いた密会の約束を目撃してから数日。

ついに、玲奈さんが指定した「火曜日」がやってきた。


「沙織、今日ちょっと急な残業が入っちゃってさ。現場のトラブルだから、夜遅くなると思う。夕飯はいらないから、先に寝てていいよ」


朝、出がけに拓也はわざとらしいため息をつきながらそう言った。

普段なら「大変だね、頑張ってね」と声をかけるところだが、今の私には彼の言葉がすべて茶番にしか聞こえない。


残業なんかじゃない。

今夜、彼は完璧なママ友・玲奈さんに会いに行くのだ。


「そう、お仕事大変だね。無理しないでね」


私は精一杯の作り笑顔で送り出した。

拓也が家を出た瞬間、私の顔から表情が消えた。


私はすぐに、数日前にあらかじめ連絡を取っておいた「ある人物」にメッセージを送った。

それは、以前私の親友が離婚問題でお世話になったという、信頼できる興信所(探偵)の調査員だった。

私のパート代の貯金を使うことにはなったが、玲奈のあの裏アカウントの発言、そして夫への投資勧誘の証拠を確実に抑えるためには、プロの手を借りるのが一番だと判断したからだ。


『沙織さん、ご主人の尾行を開始しました。現在、会社を出て駅前のカフェバーに向かっています』


夜の19時過ぎ。探偵からリアルタイムで報告と写真が届く。

そこには、少し小洒落た薄暗いカフェバーのテラス席で、仕事終わりのスーツ姿の拓也が、嬉しそうにソワソワしながら待っている姿が写っていた。


そして数分後、次の写真が送られてきた。


白のノースリーブワンピースにハイブランドのカーディガンを羽織った、相変わらず完璧な装いの玲奈さんが、拓也の前の席に滑り込む瞬間だった。


『対象(ご主人)と第二対象(ママ友)、合流しました。親密に会話を交わしています。第二対象がカバンから、何らかのパンフレットのようなものを取り出しました』


やっぱり――。不倫の誘惑だけでなく、あの怪しい投資話のクロージングが始まったのだ。

探偵からの報告をスマホで見つめながら、私は唇を噛み締めた。


「拓也、あなた本当にその罠に飛び込むつもりなの……?」


しかし、私の想像を遥かに超えるスピードで、我が家の崩壊へのカウントダウンは進んでいた。

翌日、私は念のためにと、我が家の家計のすべてが詰まった「ある通帳」を確認しに、銀行へと向かった。


ATMに銀行口座の通帳を入れ、記帳された最新の残高を見た瞬間。

私はその場で、文字通りへなへなと崩れ落ちそうになった。


娘の将来のための貯金と、いつか建てたいと言っていたマイホームの頭金、合わせて300万円。


その大半が、たった一日の間に、跡形もなく引き出されていたのだ――。




💬 管理人コラム

第2話・前編をお読みいただきありがとうございました!

火曜日の夜、残業と嘘をついて玲奈さんと密会する拓也。探偵のカメラがばっちりその姿を捉えましたが、事態は不倫以上の最悪な方向へ動き出してしまいました……!😱


なんと、我が家の命綱とも言える大切な貯金300万円が引き出されているという衝撃の事実。これ、確実にあの『投資話』に拓也が手を出してしまったということですよね!?


他人の家庭を壊して楽しむモンスターママ友と、手のひらで転がされる愚かな夫。沙織さんの大切な財産はどうなってしまうのか……!?


次回、第2話・中編では、沙織さんが夫を問い詰める緊迫の直接対決、そして夫の口から飛び出す信じられない言い訳が炸裂します!

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