第1話・後編
張り巡らされた蜘蛛の糸。夫を誘う悪魔の囁き
【玲奈:拓也さん、さっきの秘密の話、奥さんには内緒ですよ?😉】
暗闇の中で白く浮かび上がったスマートフォンの画面を、私は血の気が引く思いで見つめていた。
私のすぐ隣で、夫の拓也は何も知らずに高い寝息を立てている。
普段なら、夫のスマホを盗み見るなんて絶対にしない。
けれど、あの玲奈の「裏アカウント」に書かれていた不穏な言葉が、私の理性を完全に狂わせていた。
『さて、この旦那、どこまで堕ちるか試してみようかな』
震える指先で、拓也のスマホのロックを解除した。
付き合いが長いから、パスコードは知っている。LINEのアイコンをタップし、玲奈さんとのトーク画面を開いた。
そこに並んでいたのは、目を疑うようなやり取りだった。
「今日は楽しかったです!玲奈さんみたいな綺麗な人に褒められて緊張しちゃいました」と、鼻の下を伸ばしてスタンプを連打する拓也。
それに対して玲奈さんは、「拓也さんって本当にセンスが良いから、今の工務店にいるのはもったいない気がしちゃう」と、絶妙に夫のプライドをくすぐる言葉を返していた。
そして、問題の『秘密の話』の核心が、そこにはっきりと残されていたのだ。
『実はね、私の主人のコネで、少額からでも絶対に儲かる特別な投資枠があるの。本当は部外者には教えちゃいけないんだけど……拓也さんには内緒で特別に紹介してあげる。沙織さんには内緒ね? 稼いでからびっくりさせちゃおう?』
『本当ですか!? やってみたいです!俺、もっと稼いで沙織や娘を楽にさせてやりたいんです』
『ふふ、頼もしい。じゃあ、詳しい資料を渡したいから、今度の火曜日の夜、仕事終わりに少しだけ二人で会える?』
バカな男。本当に、どこまでも愚かでバカな男――。
妻を楽にさせたいという大義名分を掲げながら、その実、完璧な美女から頼りにされ、秘密の共有をしているというシチュエーションに完全に酔いしれている。
玲奈の狙いは、不倫だけじゃない。
「絶対に儲かる投資」なんて嘘に決まっている。彼女は夫を誘惑し、洗脳し、我が家の財産ごと破滅させて、その様子を裏アカウントで嘲笑うつもりなのだ。
激しい怒りと悔しさで、涙が溢れてスマホの画面が滲む。
けれど、ここで感情的に拓也を問い詰めれば、彼は必死に隠蔽し、私に隠れて玲奈との繋がりをさらに深めるだけだろう。
「……絶対に、許さない」
私は静かに夫のスマホを元の位置に戻し、暗闇の中で深く息を吐いた。
親切なママ友の仮面を被った悪魔と、その蜘蛛の糸に自ら絡まりにいく愚かな夫。
二人の裏切りを証明する証拠のスクショを、私は自分のスマホにしっかりと保存した。
奪われる前に、奪い返す。
私の静かなる報復の計画が、この夜、ひっそりと幕を開けた――。
💬 管理人コラム
第1話・後編を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
玲奈さんの仕掛けた罠の正体は、不倫の誘惑と、怪しすぎる『投資話』のダブルパンチでしたね。それに見事引っかかっていく拓也のバカっぷりには、読んでいて思わず拳に力が入ってしまいます……!😤
ですが、沙織さんはただ泣き寝入りするような女性ではありませんでした。感情を抑え、冷徹に反撃の準備を始めた姿にはゾクゾクしますね!
物語はいよいよ次回、第2話へ突入します!
火曜日の夜、夫と玲奈さんの『密会』で何が起きるのか?沙織さんの動向からも目が離せません!
「沙織さん負けないで!」と思ってくださった方は、ぜひ『いいね』やコメントで応援の声を届けてくださいね!👇