第1話・中編
見つけてしまった、完璧なママ友の「裏アカウント」
ホームパーティーからの帰り道、私の胸のざわつきは収まらなかった。
玲奈さんが私の夫・拓也を見る目。あれは、ただのママ友の夫に対する態度ではなかった気がする。
「なあ沙織、玲奈さんって本当にいい人だな。俺たちのこともあんなに褒めてくれてさ」
隣を歩く拓也は、鼻高々といった様子で上機嫌だった。
高級ワインを振る舞われ、エリートな旦那さんたちに囲まれて、自分がさもその一員になれたかのように錯覚しているらしい。
「……そうだね。でも、ちょっと場違いだったかなって私は緊張しちゃった」
「何言ってるんだよ、せっかくのチャンスじゃないか。もっと仲良くさせてもらえよ」
拓也のどこか浮ついた言葉に、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
その夜。
娘を寝かしつけ、リビングで一人スマートフォンを眺めていた時のことだ。
なんとなくインスタグラムを開き、玲奈さんの本アカウントの投稿を見ていた。
今日行われたパーティーの写真が、さっそく綺麗な加工付きでアップされている。
『今日も素敵な仲間たちと贅沢なひととき✨ 出会いに感謝です💖』
そこには私と娘の後ろ姿も少しだけ写り込んでいた。
いつも通りの華やかでポジティブな投稿。しかし、私はそのコメント欄のハッシュタグをスクロールしている時、ふとあることに気づいた。
玲奈さんの投稿に、毎回のように真っ先に「いいね!」を押し、当たり障りのない絵文字を並べている、アイコンのない鍵付きのアカウントがあった。
アカウント名はランダムな英数字だったが、そのプロフィールの短い一言が目に留まったのだ。
『表の顔に疲れた。世間知らずな底辺たちを観察する日記。』
ゾクッ、と背筋に冷たいものが走った。
ただの嫌がらせアカウントだろうか。そう思おうとしたが、気になって仕方がない。
私は自分の趣味用の、顔も名前も出していない完全なサブアカウントに切り替え、その鍵アカにフォロー申請を送ってみることにした。
どうせ拒否されるだろう――そう思っていた。
しかし、相手はフォロワー数を増やして誰かに見せびらかしたいタイプの鍵アカだったのか、わずか数分で申請が承認されたのだ。
画面に表示された投稿の数々を見て、私は息を呑んだ。
そこにあったのは、玲奈さんの本アカウントで投稿されているラグジュアリーな写真の「舞台裏」だった。
そして、今日まさに私たちが招待されたパーティーの写真もアップされていたのだ。
そこには、私の夫・拓也が、玲奈さんから勧められた高級ワインを嬉しそうに飲んでいる写真が隠し撮り風に載せられていた。
添えられた文章を読んだ瞬間、私は目の前が真っ暗になった。
『今日の臨時泥沼見学会。工務店勤務の低年収夫、お買い得なワインで大喜び。ちょろすぎて笑える。奥さんの方も地味で芋くさいし、私の引き立て役にぴったり。こういう底辺家族を間近で見てると、自分の幸せがさらに引き立つからやめられないわ〜。さて、この旦那、どこまで堕ちるか試してみようかな』
心臓が、早鐘のように打ち鳴らされる。
「信頼できるお友達」だと、私の手を握って微笑んでくれたあの玲奈さんが……?
私たちを、自分を引き立てるための「底辺」として見下し、観察して楽しんでいた?
あまりの衝撃にスマートホンを持つ手がガタガタと震える。
しかし、本当の恐怖は、その投稿の最後に書かれた一言だった。
『さっきLINEしたら、速攻で鼻の下伸ばした返信きた(笑)。仕込みはバッチリ。』
私は恐る恐る、隣の部屋でいびきをかいて眠っている拓也のスマートフォンに目をやった。
画面がかすかに光り、ポップアップで通知が表示される。
【玲奈:拓也さん、さっきの秘密の話、奥さんには内緒ですよ?😉】
親切なママ友の仮面の下にあった、ドス黒い悪意。
私の家庭は、彼女の退屈しのぎの「おもちゃ」として、すでに狙われていたのだ――。
💬 管理人コラム
第1話・中編をお読みいただきありがとうございました!
玲奈さんの恐ろしすぎる「裏アカウント」が早くも発覚してしまいました……。優しくて完璧なママ友の正体は、他人の家庭を見下して悦に浸る悪趣味なモンスターだったのです😱
しかも、沙織さんの夫・拓也はすでに玲奈さんの手のひらの上で転がされ始めている様子。一体「秘密の話」とは何なのでしょうか!?
次回、第1話・後編では、玲奈さんが拓也に仕掛けた「最初の罠」の全貌が明らかになります。沙織さんはこの危機をどう切り抜けるのか!?
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