第5話・中編:現れた「第2の刺客」。冷徹に突きつけられる離婚協議書と、法外な(?)慰謝料の額

スマホの向こうで、夫の健一が「おい、美咲!? 誰が来たんだよ!」と半狂乱で叫んでいる。

私はその声を無視して、静かに玄関のドアを開けた。

そこに立っていたのは、タイトな黒のスーツを隙なく着こなし、知的な眼鏡の奥から鋭い視線を放つ女性だった。彼女の手には、重みのありそうなアタッシュケースが握られている。

「初めまして、藤本美咲さん。佐藤弁護士からご紹介いただきました、探偵事務所『ライト・リーガル』の代表、一ノ瀬と申します」

彼女こそ、私が離婚を確実にするために水面下で動かしていた【第2の刺客】――プロの不倫・財産調査員だった。


「一ノ瀬さん、お待ちしておりました。どうぞ中へ」

私が彼女をリビングへ案内すると、スマホからまだ健一の声が漏れていた。一ノ瀬さんは私の手元にあるスマホにちらりと目をやると、冷徹な笑みを浮かべ、あえて大きな声でこう言った。

「あら、ご主人とお通話中でしたか? ちょうど良かったです。藤本健一さん、初めまして。私は美咲さんからご依頼を受け、あなたの『ここ数年間の身辺調査』を行っていた者です」

スマホの向こうが、一瞬で凍りついたように静まり返る。

『しんぺん……ちょうさ……? なんだよそれ……。俺はサラ金と実家の借金でそれどころじゃ……』


「ええ、ですから『それどころ』にさせて頂くために参りました」

一ノ瀬さんはアタッシュケースから、分厚い一冊のファイルを机にドン、と置いた。表紙には『藤本健一氏・不貞行為および隠匿財産調査報告書』と印字されている。

「健一、聞こえる? 一ノ瀬さんが持ってきてくれたのよ。あなたが借金まみれの実家を助けるフリをして、実は会社の『若い女性部下』と3年前から不倫関係にあり、生活費と称して会社の経費やキャッシングで毎月数十万円を貢ぎ込んでいた、決定的な証拠の数々をね」

『なっ……!?』

受話器から、健一の息が止まるような音が聞こえた。


そう。健一が私に隠していたのは、実家の借金だけではなかったのだ。実家の借金を言い訳にすれば、多少の金遣いの荒さや帰宅の遅さを誤魔化せると思い込み、その裏で若い女と不倫に溺れていた。どこまでも腐りきった男だった。

「言い訳は無駄よ。お相手の女性の自宅マンションに入るあなたの写真、手を繋いでブランド店から出てくる写真、すべて言い逃れのできない画質で、日付入りで揃っているわ。さらに、あなたが私に『実家への仕送り』と言って引き出していたお金の一部が、彼女の口座やプレゼント代に消えていた銀行の取引履歴もね」

『う、嘘だ……! なんで……そんなもの……っ!』

「プロを舐めないで頂きたいわね」

一ノ瀬さんが冷たく追撃する。


「そして美咲さん、こちらが佐藤弁護士と事前に作成した、ご主人宛ての『離婚協議書』です」

机の上に、もう一枚の書類が並べられた。

「親権は当然、美咲さん。養育費は算定表の最高額。そして、不貞行為および悪質な財産隠匿に対する精神的苦痛の慰謝料として――【500万円】を請求します」

『ご、500万!? 馬鹿言うな! さっきも言っただろ、お姉のサラ金の連帯保証で420万、さらに実家の差し押さえまで食らってるんだぞ! 俺にそんな大金、払えるわけがない!』

健一の声は、もはや怒りよりも絶望の悲鳴に変わっていた。


「払えるか払えないかを聞いているんじゃないのよ、健一」

私はスマホに向かって、今までで一番冷酷なトーンで言い放った。

「これは『誠意』ではなく『決定事項』。もしこの協議書へのサインを拒むなら、今すぐこの報告書を、あなたの会社の社長、総務部、そしてその不倫相手の女性の自宅と、彼女のご両親宛てに内容証明で一斉にぶちまけるわ」

借金で会社に居づらくなり、さらに「社内不倫の証拠」まで会社に送りつけられれば、健一の社会的地位は完全に終わる。懲戒解雇になってもおかしくない。

「会社でのプライド、エリートの肩書き……全部一瞬で消えるわよ。今すぐこれにサインして自己破産の手続きに入るか、それともすべてを失って社会的に抹殺されるか、選びなさい」

『み、美咲……頼む、頼むからそれだけは……っ!!』

受話器の向こうの健一は、完全にプライドをへし折られ、ただ泣き叫ぶことしかできなかった。

勝負はあった。あとは、彼が絶望の中で白旗を上げる瞬間を待つだけ――そう思った、その時だった。

突然、私のスマホのキャッチホンが鳴った。

画面を見ると、そこには表示されていたのは、健一の実家の、あの【狂気のお義姉さん】からの着信だった――。

――第5話・後編へ続く。


✍️ 管理人より

第5話・中編をお読みいただきありがとうございます!なんと、実家の借金という大義名分の裏で、まさかの「社内不倫」まで発覚しました…!どこまでクズなら気が済むのでしょうか。一ノ瀬さんの鮮やかな追いつめと、美咲さんの冷徹な2択、スカッとしましたね!

💡 さて、ラストでまさかの「お義姉さん」からキャッチホンが入りましたが…

  • 自分たちのせいで健一にサラ金の請求が行っているはずの義家族。このタイミングでの電話の用件は一体何だと思いますか?(まともな謝罪なわけがありません…!)
  • 美咲さんの突きつけた「離婚協議書」に対し、夫・健一は最終的にどんな無様な姿を見せるでしょうか?

次回、第5話・後編(完結編)では、お義姉さんからの衝撃の電話、そして美咲さんの容赦なきトドメが描かれます!藤本家が迎える「本当の因果応報」を見届けたい方は、ぜひフォローといいね、コメントで予想を教えてくださいね!