第4話・後編:崩れ去った義家族のプライド。泣きつく夫に下した非情の決断
「さあ、今すぐここで選びなさい!!」
私の叫びが、重苦しく静まり返ったリビングに響き渡る。
床にへたり込んで涙を流す夫の健一。そして、机の上の【最終警告書】を凝視したまま、怒りと恐怖で顔を歪ませるお義母さんとお義姉さん。
沈黙を破ったのは、やはり自己保身の塊であるお義姉さんだった。
『な、何よそれ……! 脅迫じゃない! 健一が会社をクビになろうが自己破産しようが、あんたの旦那でしょ!? 夫婦なら、あんたが支えるのが筋じゃないの! なんで私たちに家を売れなんて言われなきゃいけないのよ!』
ヒステリックに叫びながら、お義姉さんは私を睨みつけてくる。どこまでも自分たちが被害者だと言いたげなその態度に、私は冷笑を浮かべた。
「支える? 20年間、私の知らないところで実家の尻拭いをさせられ続けて、さらに無断で420万もの連帯保証人にされたのよ? これ以上、誰がそんな男を支えるの? 勘違いしないで。私はもう、健一の妻でもなければ、あんたたちの身内でもないわ」
すると、今まで黙っていたお義母さんが、急にボタボタと涙を流し始め、私の前に膝をついた。
『美咲さん……お願い、それだけは勘弁してちょうだい……! この家は、亡くなった主人が遺してくれた大切な場所なの。ここを売ってしまったら、近所の人たちに何て言われるか……藤本家の名誉が完全に潰れてしまうわ……!』
泣き落とし。それも、この期に及んでまだ「世間体」や「藤本家の名誉」などと言っている。
「お義母さん。あなたの娘が犯した罪のせいで、私の家族の未来が潰されかけているんです。ご自分の娘がサラ金から金を借りまくった時点で、その大好きな名誉とやらはとっくにドブに落ちてるんですよ」
私は冷たく突き放し、床の健一を見下ろした。
「健一。今日の夜24時までに、この『実家売却の合意書』に母親と姉のサインを貰って私のところに持ってきなさい。それができないなら、予定通り月曜日に弁護士が動く。……じゃあね」
引き留める声を無視し、私は義実家を後にした。背後からは、お義母さんの泣き叫ぶ声とお義姉さんの罵声、そして夫の情けない嗚咽が交じり合って聞こえていた。
その日の夜、23時過ぎ。自宅のリビングで私が時計を見つめていると、玄関のドアが静かに開き、健一が帰ってきた。その手には、くしゃくしゃになったあの書類が握られていた。
健一は私の前にトボトボと歩み寄ると、そのまま床に膝をつき、激しく泣き崩れた。
『美咲……ごめん、本当にごめん……。母さんも姉貴も、どうしてもサインしてくれなかったんだ……! 家を手放すくらいなら死ぬって大騒ぎされて、俺にはこれ以上どうすることも……っ!』
夫は最後まで、あの母親と姉から「家」を勝ち取ることができなかった。実家を解体する爆弾を持たせて送り出したのに、結局は自分がその爆弾を抱えたまま、私の元に泣きついてきたのだ。
どこまでも弱く、どこまでも身勝手なマザコン男。
「そう。わかったわ」
私の心には、もう怒りすら湧かなかった。ただ、ただ冷徹な決意があるだけだった。
「約束通り、これで終わりね」
私は健一が差し出した書類には目もくれず、スマホを取り出して佐藤先生にメッセージを送った。――『交渉は決裂しました。予定通り、月曜朝から夫への法的措置をお願いします』と。
『美咲! 頼むから見捨てないでくれ! 俺、これから心を入れ替えて働くから! 離婚だけは……自己破産だけは勘弁してくれ!!』
足元にしがみついて泣き叫ぶ男を冷たく引き剥がし、私は子どもたちの待つ寝室へと向かった。
夫は実家を守るために、自分自身の破滅を選んだ。いや、選ばされたのだ。あの強欲な母親と姉によって。
全7話の物語は、ここで第4話が終了。次回、第5話からは、いよいよ逃げ場を失った夫が辿る「地獄の自己破産手続き」と、離婚に向けて私が放つ【第2の刺客】が登場する。藤本家の崩壊は、まだ始まったばかり――。
――第5話へ続く。
✍️ 管理人より
第4話・後編、ついに実家との交渉が決裂してしまいましたね…。お義母さんの「世間体命」の泣き落としや、お義姉さんの「夫婦なんだから支えろ」という逆ギレには怒りが収まりませんでしたが、美咲さんが一歩も引かずに冷徹に突き放す姿には本当に震えました!
💡 結局、母親と姉に押し切られ、サインを貰えずに帰ってきた夫ですが…
- 実家のために自分の人生(会社や家族)を犠牲にすることになった夫を、どう思いますか?
- 美咲さんが佐藤先生に送った「法的措置の開始」の合図。来週月曜日、夫にはどんな地獄が待っているでしょうか?
物語の折り返しとなる第4話が終わり、いよいよ来週からは夫個人への容赦ない追いつめ(第5話)が始まります。美咲さんが放つ「第2の刺客」とは一体誰なのか…!?ぜひフォローして次回を楽しみにお待ちください!