第3話・前編:開戦の朝。プロの前に並べた20年間の「嘘」と420万円の爆弾
翌朝、月曜日。
子どもたちをいつも通りに学校へと送り出したあと、私は魂が抜けたような身体に無理やりトレンチコートを羽織った。
行き先は、あらかじめネットで必死に調べて予約を取った【法律事務所】。私が向かった「ある場所」とは、弁護士のもとだった。
重いビルの扉を開け、静まり返った相談室に通される。目の前に座ったのは、白髪交じりのベテラン然とした男性弁護士、佐藤先生だった。
「……なるほど。奥様に無断で20年間、実家の債務を支払い続け、それが終わった途端に、今度は義理のお姉様の連帯保証人として420万円の請求が来ている、と」
佐藤先生は、私がデスクに並べた【督促状】や、昨晩のうちに夫の書斎から掻き集めた「返済履歴のメモ」「過去の通帳のコピー」を眼鏡の奥の目でじっと見つめた。
「はい。すべて、私には完全に隠されていました。私はこの20年間、自分のパート代もすべて生活費と子どもの教育費に回し、必死に節約してきたんです。それなのに夫は……」
そこまで言うと、我慢していた悔しさが喉の奥まで込み上げてきて、声が震えた。
「先生、私は離婚したいです。そして、この420万円という借金から、私と子どもたちの生活を絶対に守りたい。夫や義実家に、これまでの代償を支払わせることはできますか?」
私の悲痛な訴えに、佐藤先生は深く深く頷き、ペンを置いた。
『美咲さん、非常にお辛い状況ですね。まず、一番不安に思われている【420万円の返済義務】についてですが……結論から言うと、あなた自身がこのお金を支払う法的義務はありません』
「え……本当ですか?」
『ええ。どれだけ夫婦であっても、夫が個人の判断で(しかも無断で)なった連帯保証人の債務は、妻に引き継がれることはありません。ですから、債権回収会社があなた個人の財産を差し押さえたり、あなたに支払いを強要することは法律上できません。その点は安心してください』
一瞬、張り詰めていた胸の奥が少しだけ軽くなった気がした。しかし、先生の次の言葉で、再び現実に引き戻されることになる。
『ただし、問題はご主人の口座や、今後の夫婦の財産です。ご主人が一括請求に応じられず、給与の差し押さえなどを受ければ、当然、今後の婚姻生活や家族の家計は破綻します。そして、離婚における【慰謝料】の件ですが――』
佐藤先生は少し表情を曇らせた。
『20年間の隠し事、そして多額の無断の連帯保証。これらは十分に「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚原因になります。しかし、問題は相手から実際にいくら回収できるか、です。ご主人にこれ以上の貯蓄がなく、さらに420万円の借金を抱えているとなると、離婚が成立しても、あなたへの慰謝料や、お子さんへの養育費がまともに支払われないリスクが極めて高い』
「そんな……。じゃあ、夫にお金がないなら、私は20年間騙され損で、一銭も取れずに泣き寝入りするしかないんですか!?」
私の言葉に、佐藤先生は不敵とも言える笑みをうっすらと浮かべた。
『いいえ、美咲さん。まだ諦めるのは早い。ご主人にないのなら、“この原因を作った大元”から毟り取る方法を考えましょう。――つまり、お義母さんとお義姉さんです』
法律のプロが提示した、あまりにも冷徹で、そして強力な「反撃のプラン」。その全貌を聞いたとき、私の心に眠っていた復讐の炎が、静かに、しかし激しく燃え上がった――。
――第3話・中編へ続く。
✍️ 管理人より
美咲さんが向かった先は、やはり弁護士事務所でした!妻自身に420万円の支払い義務はないと分かり一安心したものの、夫が無一文であれば慰謝料や養育費が取れないというリアルな壁にぶち当たります。しかし、弁護士の先生から出たのは「義家族から毟り取る」という頼もしすぎる作戦でした!
💡 夫に財産がない場合、義母や義姉をターゲットにする弁護士の作戦について…
- 自分の人生をめちゃくちゃにした義実家なら、徹底的に追い詰めてターゲットにするべきだと思いますか?
- プロが授けた「反撃のプラン」とは、具体的にどんな方法だと思いますか?
全7話の第3話(前編)、いよいよ法的な対抗策が見えてきました。義母と義姉を奈落の底へ突き落とすための中編も、ぜひフォローしてお待ちください!