【夫の浮気相手に慰謝料請求したら、夫の借金まで発覚しました】第4話
離婚届に判を押した日――夫が明かした借金800万円の真実
「助けてくれ……」
失踪から十一日。
夫から届いた一本の電話。
その声は、私が知っている夫のものとは思えなかった。
弱々しく。
自信がなく。
今にも泣き出しそうだった。
そして。
夫は言った。
「借金が八百万円を超えた」
私は言葉を失った。
六百万円でも十分異常だった。
それなのに。
さらに二百万円以上増えている。
どういうことなのか理解できなかった。
再会
翌日。
私は夫が指定した喫茶店へ向かった。
正直、会いたくなかった。
顔も見たくなかった。
でも。
終わらせるためには会うしかなかった。
現実と向き合うしかなかった。
店の奥の席に夫はいた。
わずか十日ほどしか経っていないのに。
別人のようだった。
髪は乱れ。
無精ひげが伸び。
顔色は悪い。
目の下には濃いクマ。
五十一歳が六十歳に見えた。
私が座ると。
夫は深く頭を下げた。
そして言った。
「本当に申し訳ない」
私は何も答えなかった。
謝罪の言葉など、もう何の意味も持たなかった。
借金の理由
私は単刀直入に聞いた。
「なぜ?」
夫は俯いた。
長い沈黙。
そして。
ようやく口を開いた。
「見栄だった」
私は耳を疑った。
見栄。
それだけなのか。
八百万円もの借金の理由が。
夫は続けた。
「会社で昇進できなかった」
「若い頃に思い描いていた人生と違った」
「同級生は成功していた」
「SNSを見るたび苦しかった」
私は黙って聞いていた。
夫はさらに続けた。
「美咲には格好つけたかった」
「いい車に乗った」
「高い店へ行った」
「旅行もした」
「全部借金だった」
その言葉を聞いた瞬間。
怒りより虚しさが込み上げた。
家族を犠牲にして。
借金してまで。
守りたかったのは見栄だったのか。
浮気相手の真実
さらに意外な事実が明らかになった。
夫は言った。
「美咲とはもう終わった」
私は冷たく聞いた。
「捨てられたの?」
夫は頷いた。
「借金が分かった瞬間に」
私は複雑な気持ちになった。
当然だと思った。
しかし同時に。
少しだけ哀れにも思えた。
家族を裏切り。
お金を使い。
見栄を張り。
最後には全て失ったのだ。
娘の一言
その夜。
私は娘と息子に全てを話した。
二人とも静かに聞いていた。
そして先に口を開いたのは娘だった。
高校生とは思えないほど冷静だった。
「お父さん、自分が可愛いだけじゃん」
私は何も言えなかった。
その通りだった。
娘は続けた。
「お母さんが苦しんでる」
「私達も苦しんでる」
「でもお父さんは自分のことしか考えてない」
部屋が静かになった。
息子の怒り
息子はさらに厳しかった。
「離婚した方がいい」
即答だった。
迷いがなかった。
「また同じことするよ」
「信用なんか戻らない」
「お母さんの人生を壊すだけだ」
私は反論できなかった。
息子の言葉は正論だった。
最後のお願い
数日後。
夫が家へ来た。
久しぶりだった。
リビングに座る夫。
娘は自室から出てこない。
息子も目を合わせなかった。
それが現実だった。
夫は私に言った。
「やり直したい」
私は黙っていた。
夫は続けた。
「借金は返す」
「仕事も続ける」
「二度と嘘はつかない」
「だからもう一度だけ信じてほしい」
その瞬間。
私は夫の顔を見た。
そして思った。
私は何を失ったのだろう。
お金か。
時間か。
信頼か。
その答えは一つだった。
信頼だった。
失ったお金は取り戻せる。
時間も前を向けば進める。
でも。
信頼だけは違う。
壊れたら元には戻らない。
離婚届
私は静かに封筒を取り出した。
中には離婚届が入っていた。
夫の顔色が変わった。
私は言った。
「もう決めてたの」
夫は何か言おうとした。
でも言葉が出ない。
私は続けた。
「浮気より借金より」
「私が一番悲しかったのは嘘だった」
「二十二年間の結婚生活を信じていたから」
涙が溢れた。
夫も泣いていた。
でも。
もう遅かった。
私は離婚届に判を押した。
その音は小さかった。
けれど。
二十二年の結婚生活が終わる音にも聞こえた。
夫は最後に言った。
「本当に後悔してる」
私は答えなかった。
後悔は。
失った後にしか生まれないものだから。
しかし。
この時の私は知らなかった。
離婚から三年後。
元夫から再び連絡が来ることを。
そして。
私の人生がもう一度大きく揺れることを。
(最終話へ続く)
■管理人より
浮気や借金そのものより、「長年信じてきた人の嘘」が一番つらかったという声は少なくありません。
夫婦関係は信頼の上に成り立っています。その土台が崩れた時、再構築は簡単ではありません。
皆さんなら、一度失った信頼を取り戻せると思いますか?
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【それでも私は前を向いた――離婚から3年後、元夫から届いた最後の連絡】